ちゃらんぽらん ページ12
彼が帰ってから、どこか
わたしは不思議な感覚に包まれていた。
遊「だから!そこどきなさいよっ」
どんっ
遊「くすくす、ほんとに鈍臭い子ね…」
「………」
遊「ちょっと…何、あの子。
ぼんやりして、気色悪い」
どたどた…
恒例のいびりも気づけば終わっていた。
わたしはふわふわする意識を
無理やりに眼を見開いたりして、
取り戻そうとしてみた。
それでも、どうしても
?「Aさん」
「!はい!あ…日輪さん」
日「どうかした?何度か呼んだのよ?」
「あ、いえ、ごめんなさい。
少しぼんやりしちゃって」
日「珍しいわね、Aさんが
ぼーっとするなんて。…あ、
もしかして、銀さん、おかしなことを、」
「いえ!!そんな、…。
むしろ、何もしないで話していただけで…。
こんなんで良かったのでしょうか」
きいっ…
眉を顰めるわたしの隣に
車椅子を動かし、日輪さんが並ぶ。
日「いいのよ。あの人はそういう人なの。
頼みを聴いてくれて、ありがとうね」
「いえ……」
日「…何か、あったの?」
「…え、」
日輪さんは優しく微笑みながら、
わたしの顔を覗き込んだ。
初めてお逢いしたのはいつだったか、
未だわたしが禿上がりだった頃かしら。
何があっても、どんなことが起こっても
この太陽のような温かな微笑みを
決して、崩さない人だった。
わたしはこの笑顔に触れて、
初めて肌に触れることなく、
人を温めることが出来る人がいることを知った。
「……と、友達に、なると言われました」
日「友達に?」
「はい…。恐らくですが、
わたしが友達というものを持ったことがない
とお話したので、哀れんでくださったのでしょう。
今日から友達だからなと…」
日「ふふふっ」
「…日輪さん?」
日「ふふ、ごめんなさい。
いえ、やっぱりね。
銀さんなら、あなたに
響かせられると想ったわ」
「…?」
日「なってあげて」
「…友達に、ですか?
でも、分かっています。
銀時さんはお優しい方なのですよね。
それでそんな風に言ってくださって…
帰り際にはまた来るとも仰ってくれました。
わたしは、それで十分です」
日「あら、あの人は
ちゃらんぽらんだけど
女性とした約束は、必ず守る人よ。
だから、Aさんもちゃんと応えてあげて」
日輪さんは、
昨夜はありがとう、ゆっくり休んで。と
言い残して、車椅子を動かして去っていた。
わたしはひとり、
「友達…」
と繰り返した。
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作者名:美雨 | 作成日時:2019年2月27日 23時