それを恋と呼べぬまま【万葉】完結

七 ページ8

それから拙者は、思いつく限りの
旅の思い出を連ねた。


ほとんどは思い出というより、
旅を経て得た気付きや知識であったが、
Aはそのどれもを興味深そうに聞いてくれた。


魚は餌によって釣果が変わること、
青鷺は注視するとすぐに逃げてしまうこと、
山の天気は想像よりずっと変わりやすいこと。

スライムを焼いて食べると言ったときだけ、
彼女は半信半疑にそれを想像しては眉を顰めていて
それが面白くて思わず笑ったりして。




気付けばすっかり夜も耽けていたので、
居間に二つ布団を敷いた。


彼女はまだまだ聞き足りない様子だったが、
小一時間もすれば睡魔に負け、
寝入ってしまったようだった。


それを見届けてから、拙者も目を閉じる。


柔らかな布団で眠るのも、
既に懐かしく感じた。


まだ嵐は吹き荒れていて、
獰猛な風音は耳に痛く、
そっと掛け布団の中に頭を収めた。




今日は実に僥倖な一日だった。


実質、彼女を救った浪人に
拙者も救われたようなもの。

そこには間違いなく、
彼女の素直さや優しさも不可欠だ。

それに彼女は、年下でありながら、
自分も大変な状況下にいるというのに
他者のことまで思いやれている。

彼女もその浪人も、心が澄んでおり、清いのだ。


その縁に関われたことを嬉しく思う。




いつかその浪人とも相見えてみたいものだな、と
眠気にふわついた思考を巡らせているうちに、
拙者もゆっくりと意識を落とした。

八→←六

• 金　運: ★☆☆☆☆
• 恋愛運: ★★★☆☆
• 健康運: ★★★★★
• 全体運: ★★★☆☆

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