不器用 ページ3
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私は今、すごく悩んでいる。
具体的に言うと、睡眠中のとある人物を起こすか起こさないか、だ。
仕事ができる有能でハイスペックな書記長──トントンさんに起こしてこいと頼まれて今に至る。部屋の前で立ち止まったまま、かれこれ10分以上は経った。ドアをノックしようとするものの、その手がドアに触れることはない。
「………行くしかない……」
ぎゅっと拳を握りしめる。そしてドアノブに手を伸ばした。
この部屋にいる彼は、苦手だ。誰よりも冷たい。
ショッピ曰く「ゾムさんはツンデレ」だとか。私、その人のツンしか知らないんだけど…。
恐る恐る扉を開けると、ナイフや爆弾的なもので散らかっている、想像通りの光景が目に飛び込んできた。その危険物を避けながら気持ちよさそうに眠っている彼の元へ足を運ぶ。
「ぞ、ゾムさん」
耳元に顔を近づけて呼んでみるが起きる気配はない。なんで起きてくれないの、と思わず下唇を噛んだ。
これは肩を叩くしかない……よね。
私がゾムさんの体に触れてしまうと、彼はすぐに離れて顔をフードで覆い嫌がるのだが、今は仕方ない。人差し指で肩をつついた。
「ゾムさ────………ひゃっ」
「……………だれ」
眠っていたはずのゾムさんから手首を強い力で掴まれた。さすが人より五感が優れているゾムさん。
まだ脳が覚醒していないのか、目をうっすらと開けている。しかしこの手の力を出せるのは、もう恐怖でしかない。
「おはようございます」
「……セレナ、？」
「は、い」
「…………なんで、おるん」
「トントンさんに頼まれたので…」
「トントン…？─────え、は、セレナ！？」
やっと私に気づいたのか、慌てて手を離して体を起こした。心做しか顔が赤いような。
しばらくの沈黙を破ったのは彼で、腰を重たそうに上げながら立ち上がって、私の目を綺麗な緑色の瞳で見つめた。こんなにちゃんと見たの、久しぶりかもしれない。
しかしその瞳はいつもの冷たい目とは違い、どこか喜んだ様子だった。
「出てってくれへん」
「…？」
「……俺の部屋に入ってこんで。あんま気分良くないんやけど」
「あ、ごめんなさい」
どうやら、喜んだというのは私の勘違いだったようだ。
「(………あぶな、手出しそうになったやんか。でも部屋におったんは嬉しかった！！)」
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作者名：かえち
| 作成日時：2019年11月3日 18時
