不器用 ページ12
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扉を控えめにノックする。
「トントンさん、失礼します」
返事はなし。無視なのか、それとも仕事に没頭しているだけなのか。エーミールさんの件でキャパオーバーした頭では考えることができなかった。
目で確かめればいいよね、と勢いよく開けた。今の私は頭がパンクしてるので、正常じゃない(はず)。
部屋の中にいたトントンさんは、大量の書類に囲まれながらパソコンと向き合って作業をしている。隣では、はぁ……とエーミールさんが頭を抱えていた。
もう一度トントンさん、と大きめの声で言えば、眉間にシワを寄せた不機嫌そうな顔で振り返った。
「なんや。今忙しいねん」
「忙しいのはわかるんですけど、体を休めた方がいいかと…」
「休んどる暇ないわ、アホちゃう」
「トントンさん、彼女に強く言わんといてください。私がお願いしたんです」
「これ、エミさんの頼みなんや」
私をキッと睨んでいたトントンさんだったが、エーミールさんが言うとバツの悪そうな顔でため息をついた。信頼している仲間に言われると、受け入れてしまうものだ。
明日から5日程ロボロさんと屋敷を出るので、トントンさんに休んでもらわないと心配で仕方がない。それに私は、エーミールさんの役にも立ちたいし。
「仕事は私がやっておきます。なので、休んでください」
「………訳分からん。なんでそう言うんですかねぇ」
「心配だからですし、トントンさんが体を壊したら皆さん困ります」
その場がしーんと静まり返る。
私、何か言っちゃいけないこと、口走ったかな。どんどん不安になっていく。
焦る私を他所に、トントンさんは何故か ふっと笑った。
「書類持っていくので、寝てくださいよ」
「わかっとるわ」
席を立ち、ベッドへ横になってくれた。よかった。
不意に、エーミールさんから肩を叩かれた。
疑問に思い横を向くと、顔が近くてびっくりする。どうやら、トントンさんに聞こえない声で私になにか伝えるらしい。
「…明日早いはずでは、」
「あぁ。いいんです、これくらい」
これくらいしか、できませんから。
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作者名：かえち
| 作成日時：2019年11月3日 18時
