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紫耀が驚いて、目を見開く。
そうしてすぐに
うんざりしたように頭を掻いて項垂れた。
『……もぉ、なんなの』
「………」
『俺が一生懸命ケリつけようとしてんのわかんないかな』
何度も何度も言わせて、追い込んだ。
それでも聞きたいと思ってしまう。
『……好きだよ』
項垂れたまま、
紫耀がぽつりと口にした。
『廉のこと、ずっと好き』
…………。
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「……ちゃうやん、」
『え?』
「もっかい、あれ、言うて」
『……どれ?』
「たばこ吸うてる時に言うてくれたやん」
『………』
「忘れたん?」
今も俺の中で鮮明によみがえる
あの時の言葉。
『……忘れるわけないよ』
「………」
『全部捨てる覚悟で言ったんだもん』
紫耀のハスキーな声が、
また俺の耳にこだまする。
『廉を、愛してる』
ずっとずっと、あの時から今も、
"愛してる"が、俺の心いっぱいに広がってるなんて。
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「………俺も」
『……………え?』
きょとん。
ほんまにその言葉がしっくりする顔で
紫耀の動きが止まる。
真ん丸になった目に、じわりと胸が温かくなった。
「俺も、紫耀が好きや」
きっと、ずっと前から。
大好きなその瞳を、じっと見つめた。
ずっとずっと逃げてた俺。
逃げずに向き合ってくれてた紫耀が
俺を想うその大きさには、敵わへんのかもしれへん。
この先の未来がどうなるかわからへんことは
今やってめちゃくちゃ怖い。
でも、それでもいいと思った。
たとえ後戻り出来んかったとしても
世界中が敵に回ったとしても、
紫耀と一緒やったら、それでいい。
『いやいやいや……え?何言ってんの、』
動揺する紫耀の声が揺れる。
「好きや、って言うてる」
『はぁ?なに……俺を犬か何かだと思ってる?』
「なに言うてんねん」
『意味わかって言ってんの?』
「わかってる」
『いや絶対わかってないだろ』
「わかってるわ」
『わかってねーよ!!好きって……、好きって、お手手繋いで一緒に映画見に行くーみたいな、そんなんじゃ、』
「好きや、紫耀」
言えば言うほどに、
胸がつかえそうになるくらいに、想いが込み上げてくる。
伝えたかった。
今まで、散々苦しめたから。
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あい(プロフ) - 完結おめでとうございます!素敵なお話でした、(T . T)もう始終涙が止まらず、とんでもない顔でお話を読んでいました笑 久しぶりにこんな甘いお話に触れられて、幸せ者です!これからも、応援しております♪ (2022年4月29日 13時) (レス) @page29 id: 74fb46b4d8 (このIDを非表示/違反報告)
あきこ - お久しぶりです。切ない気持ちがすごく伝わってきて良かったです!2人の表情まで想像できてキュンとしました!!紫耀くんの心の広さ、見習わなくては(笑)楽しませていただきありがとうございます。 (2021年5月16日 9時) (レス) id: a6652d343c (このIDを非表示/違反報告)
こでまり(プロフ) - 本当に素敵な作品ですね。不器用な2人がお互いを思い遣るが故のもどかしさ、メンバーの愛に涙が止まらない作品です。素敵なお話ありがとうございました。 (2021年4月20日 12時) (レス) id: 47561d5dfc (このIDを非表示/違反報告)
ゆうみ(プロフ) - ななみさん» コメント頂きましてありがとうございます(^^)私もじぐいわ大好きです。最後に少ーし匂わせたつもりでした笑。妄想はいくらでも出来ますがリアルのじぐいわには敵いません!こちらこそ、お読み頂きありがとうございました。新作でもお待ちしております(^^) (2021年4月16日 0時) (レス) id: f4acf235ea (このIDを非表示/違反報告)
ゆうみ(プロフ) - 由夏さん» コメントありがとうございます。返信が遅くなり申し訳ありません。しょうれんはやっぱり一緒にいるのがしっくり来ますね(^^) (2021年4月16日 0時) (レス) id: f4acf235ea (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ゆうみ | 作成日時:2021年1月11日 0時