‥ ページ17
＿
ーーー葵！
｢え……？｣
私を呼ぶ声がする。どこからか分からなくて、きょろきょろ辺りを見渡す。すると、一台の車が公園の駐車場に停まった。
よく、見慣れた車。私が助手席で、ああでもないこうでもないって、くだらない世間話をすると、嫌な顔ひとつせず、にこにこしながら聞いてくれるひとの、車だった。
｢しゅうた、｣
｢……っふざけんなよ！｣
｢…え、｣
慌てた様子で駆け寄ってきた彼は、ブランコに座る私をいつもより大きな声で叱った。あ、まだ、そんなに怒ってたんだ。優しい柊太がこんなに怒るなんて、もうだめなのかも。そう思って、また泣きそうになってしまう。
こんな状況でも、ごめんね、って。そう言えない私は、本当にどうしようもない女だ。
俯いて、涙がバレないように。でもはらはら止まらなくて、いよいよ本格的に泣き始めると、目線を合わせるように柊太は屈んだ。
｢もう！昼間暖かくても夜は寒いんだよ？！こんな薄着で外出て、風邪引いたらどうすんの？｣
｢…え……？｣
｢はい、これ着て｣
｢柊、太。あ、でも、柊太が寒いよ｣
｢いいから。あ、あとね！そもそもこんな遅い時間に飛び出して…携帯の電源まで落として、なんかあったらどうすんの？葵は女の子なんだよ？｣
｢大丈夫だ、よ｣
｢どこが？薄着で外出て、公園で泣いて、全然大丈夫じゃないじゃん。危ないから、本当にやめてね｣
｢…ご、めん、なさい｣
｢…うん。俺もごめん。言い過ぎた｣
｢……っいや、｣
｢もうこんな時間に葵を外に出すような喧嘩、しないように気を付けます。だから、｣
ーーー家に帰ろう
｢……っ、しゅ、た…ごめんなさい…っ！｣
私のこと、だいすきだよって顔で、優しく微笑まないでほしい。また、調子に乗ってしまう。
それなのに柊太は、暖かい手で私を立たせて、手冷えてんじゃん、って、また少し怒るから。早く帰ろう、と頭を撫でて、そのまま手を引いてくれるから。
｢帰ったらお風呂に入ろうね｣
｢うん｣
｢熱めにしてきちんと沈むんだよ？｣
｢…柊太、お母さんみたい｣
｢だって葵、お風呂早いんだもん。今日は冷えたからちゃんと入らないとだめ｣
｢えー｣
｢そんなこと言うなら、俺も一緒に入る｣
｢…ちゃんとひとりで入ります｣
結局、君が許してくれるから、私は彼じゃなくちゃいけないと思うんだ。
＿fin
旦那さんにしたいタイプですとても
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 387人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
aoi(プロフ) - りょうさん» りょうさま、こんばんは＊コメントありがとうございます。いつもあたたかいお言葉、本当にうれしいです。これからもそう言ってもらえるおはなしを、書いていけたらなあと思います！ (2019年11月7日 20時) (
レス) id: fdd157f3df (このIDを非表示/違反報告)
りょう - 更新ありがとうございます。やっぱりaoiさんの文章大好きです…きゅんきゅんしながら読み返しました。これからも楽しみに更新お待ちしてます！ (2019年11月7日 1時) (レス) id: 087b3fd508 (このIDを非表示/違反報告)
aoi(プロフ) - りょうさん» はじめまして＊こちらこそ、もったいないお言葉ありがとうございます。これからも読みたいと思ってもらえるおはなしを、描いていければなあと思います！コメントありがとうございました＊ (2019年10月23日 21時) (レス) id: fdd157f3df (このIDを非表示/違反報告)
りょう - はじめましてaoiさんの野球選手小説大好きで、何回も読みに来てしまっています。また新しいお話を書いてくださるのを楽しみにしています！ (2019年10月23日 16時) (レス) id: 087b3fd508 (このIDを非表示/違反報告)
aoi(プロフ) - りんさん» コメントありがとうございます＊気が向いたら、おはなしを思いついたら、書きたいなあとは思っています。はっきりと言えませんが、また遊びにきてくれると嬉しいです＊ (2019年7月30日 22時) (レス) id: 3dc625fcb2 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：aoi | 作成日時：2019年2月18日 23時
