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「上林くん、お茶してく?」

「え?」



いつも玄関から自宅に入る葵さんを見届けるが、今日はまさかのひとこと。少し動揺した俺に葵さんは、



「食べたりしないから、大丈夫だよーう」



と、へらへらしながら言っておけた。相変わらず、心配するところが少しズレている。
外階段を上がり、始めて入る彼女の部屋。小さな証明やかけられたフライパン、連なっている花や少し長めなテーブル。彼女が作る生活空間が、とてもしっくりきてしまい、落ち着く、とこっそり呟く。

炬燵に座り、ホットカフェオレを頂く。すると彼女は、突然。じゃーん、と言いながら、小さな花束を取り出した。



「日本一おめでと!」



自分のことのように喜ぶ笑顔、少し赤い頬、小さな掌に握られた花束、それの先に見える華奢な肩口。ああ、すべてかわいいと思ってしまう。



「あ、りがとうございます」

「…花束、いやだった?」

「いや、そうじゃなくて。突然だったらびっくりした…」

「プチ、サプライズしたくて。そのために、お部屋に上がってもらったの」

「嬉しいです。ありがとうございます」

「えへへ、よかった。日本一すごいね、上林くん」



何も知らずに微笑む葵さんを、花束ごと包み込んでしまいたい。そう思うのに、身体は動かなくて。この関係が終わってしまうのが、こわいのだ。

受け取った花束から優しい香りがした。葵さんとよく似た香りだった。ああ、こんな気持ちでこの花束を持って帰るのか。少し後ろめたさを感じてしまった。



「これからも楽しく飲み行こうね」

「ええ、楽しみにしてます」

「野球で忙しいときは無理しないでね」

「いつもそれ言いますね。聞き慣れました」

「だって上林くん、基本的に断らないから」

「……そりゃそうでしょ」

「え?」


「俺、葵さんのことすきだもん」



ぽろ、っと溢れた本音。触れ合った瞳には、驚きを隠せない葵さんが映る。無意識にでた言葉だった。言ってしまった、と思いながらも、なぜか後悔はひとつもなかった。



「え、え…?だれが?」

「俺が」

「だれ、を?」

「葵さんを」

「え、ええー!」



心底驚いている葵さん。本当に何も気付いていなかったらしい。そんな彼女が面白くて、つい笑ってしまった。



「これから遠慮しないんで、覚悟しといてくださいね」



焦ることない、ふたりはまだ始まったばかりだ。

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aoi(プロフ) - りょうさん» りょうさま、こんばんは*コメントありがとうございます。いつもあたたかいお言葉、本当にうれしいです。これからもそう言ってもらえるおはなしを、書いていけたらなあと思います! (2019年11月7日 20時) (レス) id: fdd157f3df (このIDを非表示/違反報告)
りょう - 更新ありがとうございます。やっぱりaoiさんの文章大好きです…きゅんきゅんしながら読み返しました。これからも楽しみに更新お待ちしてます! (2019年11月7日 1時) (レス) id: 087b3fd508 (このIDを非表示/違反報告)
aoi(プロフ) - りょうさん» はじめまして*こちらこそ、もったいないお言葉ありがとうございます。これからも読みたいと思ってもらえるおはなしを、描いていければなあと思います!コメントありがとうございました* (2019年10月23日 21時) (レス) id: fdd157f3df (このIDを非表示/違反報告)
りょう - はじめましてaoiさんの野球選手小説大好きで、何回も読みに来てしまっています。また新しいお話を書いてくださるのを楽しみにしています! (2019年10月23日 16時) (レス) id: 087b3fd508 (このIDを非表示/違反報告)
aoi(プロフ) - りんさん» コメントありがとうございます*気が向いたら、おはなしを思いついたら、書きたいなあとは思っています。はっきりと言えませんが、また遊びにきてくれると嬉しいです* (2019年7月30日 22時) (レス) id: 3dc625fcb2 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:aoi | 作成日時:2019年2月18日 23時

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