31話 ページ31
古武術を応用した正邦は、パス回しが早く、火神が津川を止めた際に三回目のファールを貰ってしまった。
(まぁ天才形では無いけど、達人のチームって感じだな。
さすが、全国クラスのチーム)
ベンチから観察していると、津川が黒子にぶつかってしまった。
相変わらずの影の薄さで試合に出てたことに気づかれていなかった上に。
(過去対戦済みなのに忘れられてる……)
(しかも、普通の名乗っとる)
火神と日向が哀れんでいる中、津川が言い出した。
「俺と同じ一年……。
ねぇ知ってる? 去年ウチの先輩たち、君んとこに第1クォーターで20点差付けたらしいんだ。
だから俺、30点差ぐらい付けたくてさぁ。
まっ、ガッカリしないでね!」
気安く黒子の肩を叩いてディフェンスに戻った津川。
その時の日向、伊月、水戸部、小金井、土田、そしてリコの雰囲気は重くなった。
後藤は、その雰囲気を感じとりながら、黒子を見る。
(いや、正直木吉鉄平という絶対的エースが抜けた後で、交代も出来ない初心者二名を抱えた新設校での20点差は、かなり持った方だ)
「分かりました。
ガッカリしないように頑張ります」
ずっと黒子を見ていたから分かる。
彼の雰囲気が変わったことにも。
その瞬間、後藤は立ち上がりかけていたのを座り直して、笑い出す。
「ご、後藤?」
「すみません土田先輩」
「どうしたんだ、急に……」
「いや、彼もやっぱり帝光だったんだなと思っただけですよ」
「一体どういう……?」
ゲームが始まった。
「天才が多く集まった帝光ですけど、離れるまでは皆仲良かったんです。
ただ見てて思ったのが、仲間を馬鹿にされたら倍返しでやり返す。
そんなチームでした。特に彼、黒子くんはチーム内外からの反感を持っていた。
だからこそ、力を見せつけていた」
ディフェンスがビッシリついている中、黒子は気にせず伊月からのパスを水戸部に回して、水戸部がしっかり決めた。
次も、春日がシュートを決めようとした時、火神がしっかり防ぐ。
ようやく勢いに乗ってきた誠凛に、後藤は笑った。
(誰よりも仲間意識の強い仲間の影である彼が、黙ったまま終わらすなんてことはしないよね)
次から次へとゴールを決めていく誠凛。
点差は、0。
第1クォーターは、19対19で幕を閉じた。
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美園(プロフ) - 更新ありがとうございます!めっちゃ好きです (1月2日 18時) (レス) @page42 id: 0b7aaa97b0 (このIDを非表示/違反報告)
こと(プロフ) - めちゃくちゃ面白いです!!続き待ってます!! (12月27日 10時) (レス) @page41 id: 8bdd3d2cd9 (このIDを非表示/違反報告)
メンヘラ君。(プロフ) - 夢主君かっこいいですね!更新楽しみにしてます!無理せず、がんばってください! (2023年3月31日 22時) (レス) @page10 id: 49ed8a4d79 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:塩こんぶ | 作成日時:2023年3月18日 23時