98．舞台裏にて ページ8
「けほっ、けほけほっ…ごほん！」
俺はパイプ椅子の背凭れに身体ごと寄りかかり、ぐったり顔は天井に向けていた。
額には冷たいタオルが乗せられていて、少し頭痛を和らげてくれるようだ。
「大丈夫ですか？」
団扇で扇いでくれながら、マネージャーが聞いてくる。
「大丈夫そうに見えるかよ…げほっ」
メンバーじゃないんでついつい弱気な気持ちが漏れてしまう。
「え！？無理そうですか！？」
わかりやすく慌て出したマネージャーに苦笑する俺。
「嘘だよ。やるしかねぇだろ？」
俺は天井に向かって長く息を吐いた。
「ねぇ、ところで…ニノ、どうしてる？」
今ステージ上ではオーケストラの演奏が始まっていて、松潤が出番を迎えている。
それ以外のメンバーは裏で給水や着替えをしているはずだけど…
「え、二宮さんですか？着替えてると思いますけど？」
マネージャーは怪訝な表情を浮かべる。
俺はMC中に酷く汗をかいて薄く笑っていたニノの姿を思い出していた。
俺の勘と言えばそれまでなんだけど、何となく嫌な予感がする。
「悪いんだけど、ちょっとニノの様子見てきてくれねぇ？俺はもう、大丈夫だからさ…けほっ」
まだ少し肺が苦しいのを抑えて、俺はマネージャーに頼む。
「…わかりました。着替えお願いしますね？」
マネージャーは、俺がこんな状態のまま持ち場を離れるのは気が進まないようだったが、俺の意思を尊重してくれた。
「はぁ…あっつ……」
額に乗せたタオルはすぐに温くなってしまい、俺は側に置いてあった洗面器に投げ入れる。
…あー、あとどれくらいで出番だっけ…着替えなきゃ…
頭ではわかってるんだけど、身体が重くて言うことを聞かない。
次は上下フルで着替えなきゃなんないのに…
メイクも直さなきゃいけないのに…
目の前のハンガーに掛けられた白い衣装が霞んでくる。
手を伸ばして取ろうとするのに全然手が届かない。
このまま着替え出来なくて、曲始まってスライドアップで1人欠けてたらどーなんのかな…
やけに冷静にとんでもないことを想定するもう1人の自分がいる。
そのうちに段々身体の力が抜けてきた。
…あれ？俺もうダメなのかな…？
最後にメンバーの顔が浮かんできたような気がした。
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ゆり(プロフ) - もふもふもふもさん» コメントありがとうございます！昔の作品も読み返してくれていたんですね、嬉しすぎます( ；∀；)これからも細く長く続けていけたらと思いますので、よろしくお願いします♪ (2020年12月28日 21時) (
レス) id: 505fb463c6 (このIDを非表示/違反報告)
もふもふもふも - 更新ありがとうございます（^人^）ゆりさんの作品がお気に入りで更新されるまで昔の作品を読みなおしたりしてました!これからもゆりさんのペースで更新頑張ってください ファイトです*\(^o^)/* (2020年12月28日 15時) (レス) id: feaa44eb2b (このIDを非表示/違反報告)
ゆり(プロフ) - あんずさん» あんずさん、コメントありがとうございます！ニノって喋り口調が独特なんで書いてて楽しいんですよね。しんどくて脂汗かきながらも口元は涼しく笑みを浮かべるイメージです！(笑)今後ともよろしくお願いします(* ´ ▽ ` *) (2020年11月15日 22時) (レス) id: 505fb463c6 (このIDを非表示/違反報告)
あんず(プロフ) - あとちょっとだったのにな、って薄笑いするところが好きすぎて、またコメントしてしまいました… 気付かれたくないのもとっても可愛いです。更新ありがとうございます！ (2020年11月15日 19時) (レス) id: b23ea6b68a (このIDを非表示/違反報告)
ゆり(プロフ) - あんずさん» あんずさん、コメントありがとうございます〜！全然更新できていない間も、読み返してくれてたなんて嬉しすぎます！細く長く続けられたらと思いますので今後ともよろしくお願いします(* ´ ▽ ` *) (2020年11月8日 18時) (レス) id: 505fb463c6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ゆり
| 作成日時：2020年6月4日 12時
