カジノD,D (ページ4)

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mm「水です、どうぞ。あ、出口はあちらです」
　曇り一つないコップに注がれた水に、腰に当てられるイケメンの手。女子だったら既に落ちている。がしかし、残念ながら相手はおっさんである。
　恐らくこれは、スマートに誘導しているつもりなのだろう。だと思う。後は、アルコールが回っているのだろうという目黒の優しさだ。だが、その心遣いとは反対に、アルコールがつま先まで回ってしまったらしい男は、いよいよ奇声に近い叫び声を上げて、その場をのたうちまわった。
「俺を馬鹿にするものいい加減にしろーーーー！！！！」
　目黒が、心底不安げな目をこちらに向けてきた。
mm「え、俺、心配しただけだったんすけど」
kj「うん、めめはな、うん、そのまま成長したって？」
　康二が目黒の肩を軽く叩く。その間に、地団駄を踏んで客は暴れはじめ、他の客は遠巻きにし、酷い場合は興ざめだと帰ろうとする始末。これはいよいよ出動かなぁ、と深澤は天を仰ぐ。その瞬間、ジジっという通話が繋がった時の独特の音と共に「俺がでるか？」と入り口側に立っている筈の警備員の声がした。
fk「いや、照はまだ待機してて」
iw「りょーかい、だけど、いいのか？」
　うん、と言うよりも早く、赤子のように泣き出しそうな酔っ払い男性客に、また一人の従業員が近づいた。緑色のスカーフが印象的な彼は、人好きするあざとい笑顔を浮かべながら、「お怪我はないですか？」と手を差し伸べる。うちのシフト・マネージャーこと阿部亮平である。
「もうこんな店、二度とこん……！」
ab「そうおっしゃらずに、またいらしてください」
「ふん、それなら……そうだな、お前！！わしと勝負しろ！！」
　急に眼の色を変え、男は目黒を指さした。急に指名された目黒は「俺？」とぼんやりと呟く。阿部はそれを受けても「まあまあ」とたしなめた。
ab「お客様、彼はうちのフロアパーソンですが、また若手ですので……」
「ならお前だ！！お前でいい！！！わしをコケにしたこの店の銭！！全て徴収してくれるわ！！！！」
　男は差し出していた阿部の手首をすごい勢いで掴む。一瞬痛みからか顔を歪め、すぐに「え、」と阿部はきょとんとした表情を受けた。それに気をよくしたのかようやく口角を上げながら「そうだ、お前だ」と男は言う。目黒は眉間に皺を寄せる。