◆58 (白夜視点) Fin ページ10
(白夜視点)
「仕方がない…」
久しぶりに無理を強いた自覚は私にもある。
一度席を立って、起こさぬようにとそっと身体を横たえてやる。
髪や着物が乱れたと後で文句を言おうが自業自得だ。私の知ったことではない。
「…」
起きている時はあれだけ五月蝿いが、寝ている時は静かで、寝顔もあどけなさが残る。
Aの本当の仕事終わりは、明け方に全ての灯を落とすことだ。
「まぁ、それまでは多目に見てやろう…」
寒い季節には早いが、明け方のこの時間は少し冷える。
気は引けたが、私は自分の白い羽織を脱いでそっと肩にかけてやる。
目元にかかった髪を払いつつ改めて寝顔を見て、そっと口元を緩めた。
「お前と口喧嘩にならんのも珍しいな」
「おやすみ、A…―」
小さく声をかけてから、私は再び机に向かって筆を取った。
この鬼門の地の空が白み始めるまで、あと一時…―。
天神屋の灯守 Fin.
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猫築かなめ - とても楽しく読ませていただきました、夢主が大旦那様の元婚約者だったというところを詳しく知りたいです (2020年8月10日 11時) (レス) id: 8f5697df22 (このIDを非表示/違反報告)
こしあんのお餅 - すごく面白かったです! (2019年6月2日 17時) (レス) id: 436e739fd5 (このIDを非表示/違反報告)
蜜柑 - 夢主さんが大旦那様の元婚約者だったとは・・・!驚きました!私、こういうシリアスな感じの小説すっごく好きなんです!たとえ、作者様が自己満足でも私はとても楽しみにしています。気が向いたらで本当に結構です。大変だと思いますが更新頑張って下さい! (2019年3月7日 23時) (レス) id: 8f1f373125 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:そーめん | 作成日時:2018年11月22日 0時