◆51 （大旦那様視点） ページ3
(大旦那様視点)
「お前には改めて一週間ほど休暇を与えるよ。
そもそも昨日帰ってきたばかりで、いきなり力を使わせてすまなかったね…
今はまず、その身体を霊力共に癒やすといい」
「そうさせてもらうよ。
正直、出張中よりも今日が一番力を使ってしまったからね…」
もう隠す必要もないと笑顔を捨てた苦笑いで、その重いであろう足を推して立ち上がる。
本当ならば無理やり抱えて部屋へ放りに行っても構わないのだが、
それではAの尊厳を傷つけかねない。
このまま素直に自室に下がるつもりなどないだろうに。
「今日も、最後は帳場かい？」
「ええ。あそこは私が無理やり灯を落とさないと、
こういう日はずっと仕事をしっぱなしだからねぇ」
長い時間共に過ごしてきて、彼女がどれほど仕事に対して熱意を持っているかは、身をもって理解している。
その上でずっと抱えてきた想いも。
そういう従業員の意思を尊重するのも大旦那としてのありようではあるが、
少々見ていて歯がゆいものはある。
「そうかい。……なぁ、A」
つい呼び止めてしまってから、僕はそれが無意識であることにはっとした。
呼ばれた彼女がこちらを振り返る。
「？はい」
怪訝そうな、けれどある程度何を聞かれるのかを予想している瞳が僕を見返してくる。
お互いの間に少しばかりの沈黙が過ぎる。
「いや…この話は後日だ」
「…。ええ、わかりました」
一度瞬きした彼女は何も問い返すことは無く、そう返事をした。
女性はそういうところは敏く、頭が上がらない。
「それではおやすみなさいませ。大旦那様」
「あぁ、おやすみ。A」
そっと、自室の襖が閉じられる。
一つ息を吐き出すと、思いの外緊張していたのか肩が疲れていた。
あんなに疲れた彼女に聞けるわけもない。
僕の花嫁は、"元許嫁(お前)から見て、どうだったか"など…−。
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猫築かなめ - とても楽しく読ませていただきました、夢主が大旦那様の元婚約者だったというところを詳しく知りたいです (2020年8月10日 11時) (
レス) id: 8f5697df22 (このIDを非表示/違反報告)
こしあんのお餅 - すごく面白かったです！ (2019年6月2日 17時) (レス) id: 436e739fd5 (このIDを非表示/違反報告)
蜜柑 - 夢主さんが大旦那様の元婚約者だったとは・・・！驚きました！私、こういうシリアスな感じの小説すっごく好きなんです！たとえ、作者様が自己満足でも私はとても楽しみにしています。気が向いたらで本当に結構です。大変だと思いますが更新頑張って下さい！ (2019年3月7日 23時) (レス) id: 8f1f373125 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：そーめん | 作成日時：2018年11月22日 0時
