◆59（葵視点） ページ18
(葵視点)
あの雷雨から数日。
夏の気配はすっかり遠のき、季節は秋に入った。
気になることといえば…。
「Aさん、どうしてるかな…」
美しくも妖艶な青行燈。
その美しさとは裏腹に、妖本来の姿は異様なほどに小さく可愛らしい。
彼女には、あの日以来会っていない。
お涼や春日に聞いてみても、自室に篭って養生と報告書に明け暮れているとの事だった。
灯守としての仕事が忙しくない昨今、彼女は天神屋内でも御庭番に次いで動きやすい存在という位置にいるらしく、
今では現世出張や各地への公式・お忍びでの遠征が主な業務となっているそうだ。
今回出張に出ていた期間は約半年。
私とはほぼ入れ替わりだったとの事で、知らないのも無理はない話だった。
「養生って言ってたけど、私のご飯じゃ足りなかったかしら…？」
私の作った料理には、霊力を大幅に回復させる力がある。
このおかげで今まで生きてこられたし、これからもきっと同じことをしていく。
料理をすることでしか、私は自分の存在を示すことを知らない。
それは、折尾屋の一件で十分に身に染みた。
だからこそ、Aさんがまだ養生しているという話は聞き逃せない。
「お見舞いに行こうかしら」
幸い、彼女も他の従業員と同じく宿舎暮らしだと聞いた。
天神屋から出ようとすると大旦那様や銀次さんの許可がいるけど、宿舎はその心配がない。
「よし」
決定してから、見舞いの品は何にしようかと考える。
計画性皆無だけど、そんなことは関係ないわ。気持ちが大事なのよ。
「部屋に篭りっぱなしなら、ご飯も部屋で摂ってるのかしら…」
栄養は偏っていないか。体調は良くなってきているのか。
今度は元気な姿でここに来てほしい。
ああ、考えだしたらキリがない。
「確か、辛すぎと苦すぎが駄目って言ってたわね」
今回もお弁当にしようかしら。
以前、小説家である薄荷坊先生に出したお弁当のメニューは今も記憶に新しい。
◆60（葵視点）→←◆未回収：天地下ボイラー室2 ※オリジナル名の妖怪出ます
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猫築かなめ - とても楽しく読ませていただきました、夢主が大旦那様の元婚約者だったというところを詳しく知りたいです (2020年8月10日 11時) (
レス) id: 8f5697df22 (このIDを非表示/違反報告)
こしあんのお餅 - すごく面白かったです！ (2019年6月2日 17時) (レス) id: 436e739fd5 (このIDを非表示/違反報告)
蜜柑 - 夢主さんが大旦那様の元婚約者だったとは・・・！驚きました！私、こういうシリアスな感じの小説すっごく好きなんです！たとえ、作者様が自己満足でも私はとても楽しみにしています。気が向いたらで本当に結構です。大変だと思いますが更新頑張って下さい！ (2019年3月7日 23時) (レス) id: 8f1f373125 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：そーめん | 作成日時：2018年11月22日 0時
