Dream ページ5
白い風景。足元にはシロツメクサがひしめき合うように咲いている。
空には青がなく純白。強い風が吹いて目を伏せる。ゆっくり目を開くと、真っ白で柔らかい金髪の少女がシロツメクサの冠を作っていた。
こちらを振り向いて、手を差し出し__
「兄さん」
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「ハッ」
荒い息と共に目が覚めた。ロココ調の時計を見ると朝の9時。空は快晴。ツユクサが昨夜の雨の雫を跳ねた。
のっそりとベッドから降りて目を二、三度瞬く。
何だったんだ、あの夢…。
弓兵に切られた後の短髪を撫ぜる。雑にやったもんだアイツも。
長い廊下を歩いて、弓兵がいるであろう部屋に向かう。扉を開けて一言、アーチャー?と呼びかけると、霊体化していたのか、何も無い空間からひとりでに現れた。
「おはよう、マスター。昨夜はよく眠れたかね?」
「まぁまぁ」
素っ気なく応えて、今日行う事を話そうとした時、弓兵が止めた。
「マスター。君の名はなんと言う。」
「名前?」
「名前も知らなければ呼びにくいだろう。」
「ノアード・アイソレーション…」
「ふむ、ではノア、と。欧米の男性ではよく聞く名だ。」
「はいはい。んで、お前は?真名を教えろ」
「残念だが、私はそれ程名だたる英雄ではないものでね。名はない。」
「それでも周りに居ただろう。お前の名前を呼ぶやつが。」
「居たが、さて、とうに忘れてしまった。」
コイツ、一向に真名を教えないつもりだな。真名を知らなければコイツがどれ程強い英霊なのか、作戦を立てる手立てすら見込めない。
「だが、真名をマスターに明かさない英霊というのは俗に見る。それでも支障はないんだ。」
「それだったらフェアじゃないだろ。」
「私にとってはフェアだったがね。」
もうダメだ。埒が明かない。もうこの話題は退けて方針を話そう。
「まぁいいさ。今回は戦いとかはしないつもりだから。」
「なかなか奥手だな。私の前回のマスターはかなり好戦的だったが。」
「人にも戦い方ってのがあるんだ。今日は周りにある俺の家系以外の魔術師の血を引くヤツらの家の偵察と街の案内ぐらい。それできっかり一日を終える。」
「まだ君以外にも魔術師がいるのは分かっていたが、複数なのか?」
「いや、複数というか少数だな。名前は、ウィンドワーズ家とチェルニゴフ家、あとはコロニナンカ家ぐらいか。特にコロニナンカ家は血が途絶えそうになっているらしいからあまり視野には入れない。」
風が強く吹いた。
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作者名:白咲 アオン | 作成日時:2017年12月11日 20時