【Fate/Promise】 (ページ24)

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Blindness ページ24

オレは、囚われていた。"正義の味方"という肩書きに囚われていた。全て、あの二言からだった。

『僕はね、正義の味方になりたかったんだ。』

『オレが代わりになってやるよ。』

あの二言だけで、オレは鎖に縛り上げられた。だが錯覚というものは恐ろしく、鎖に縛り上げられて尚自分が正義の味方になれると思い込んでいた。要は操り人形だ。縛られているにも関わらず、"正義の味方"というものによって操られていた、ただの愚か者に過ぎなかった。

今目の前で刃を交えているこの少年は、分かっているのだろうか。若葉色の目が激しさを増す。彼には一言も自分の願望を話していない。叶う事のない願望を吐露したところで鼻で笑われるのがオチだ。

そういえば、一つだけ、見破られた事があったか。雇われていた事。オレは用心棒だけでなく、様々な所へ行き、様々な人を救ってきた。

"救われなければならない資格を持っている人間"を。

彼らのために、オレは何人もの人間を手にかけた。この弓で。この短剣で。殺し尽くした。頭がおかしくなるほど。召喚されては殺し、救い、報酬を得た。違う。オレが欲しかったものはこれじゃない。もちろん、全人類を救えるとは思っていなかった。だが、得るものが多い分、失うものは自分にとって多いように思えた。

オレの最期は絞首刑だった。これで彼らが幸せになるのなら、と喜んで受け入れた。だが現実は違った。オレは"必要ないから"という理由で刑に処された。邪魔だと言って殺されるのでもなく、涙して感謝されながら殺されるのでもなく、ただ消耗品の様に要らないからという理由で殺された。
正義とは裏返せばエゴイストだ。自分が捏造した幸せな世界にしようと歪め、壊し、もともと安寧だった世界を破滅させる、地球の悪者でしかないのだ。そんな事を今更理解し、悔やんだところで何にもならないというのに、生前のオレはバカみたいに正義の味方が存在すると仮定し、自分でなろうとした。自身の思い描いた正義の味方を他人に押し付けながらその時を待っていた。その答えが今だ。殺戮者となんら変わりない。
夢の概念は時に輝かしく、時に残酷だ。オレの夢だったものは、気付いた瞬間砕いた。壊しきれない部分もあった。往生際の悪いヤツだと思ってもいい。ただ、この思想を持ち続けてはいけないと、本能で感じたのかもしれない。

この聖杯戦争はまだ続くだろう。きっと、オレが次に消滅する。

短剣を握っていた手が、僅かに熱くなった。