検索窓
今日:1 hit、昨日:0 hit、合計:7,496 hit

05:幸運があることを ページ9

大蛇はまんま蛇の姿をしていた。

 巨大な身体に付いた口はこれまた大きく、人間など百人程度なら一息にぺろりと平らげてしまいそうな程だ。
 そんな口からたまにチロチロと覗く舌はまるで大木のようである。

 身体は、白色に鈍く光る細かい鱗で覆い尽くされていて何処か神聖だ。
 息が顔に当たる。生温い風は彼の息だったらしい。──だが不思議と臭いは全くないのだ。
 風が起きる度、Aの髪が靡き、猫又は毛がぺったり貼りつく。

 猫又が嫌そうに大蛇の正面から外れると「だから嫌だっつったんだァ」と言い出す始末だ。
 Aを物珍しそうに眺める赤色の大蛇の瞳を、Aもまた黙って見つめ返している。

「不思議だな。人間の小娘、私が見えているのか」
「はい」

 大蛇は面白いものを見たとばかりに、「ほう、ほう」と繰り返す。
 鴉天狗が「妖怪の物語りを書きたいと言う。良ければ少し付き合わぬか」と大蛇に言った。

「こいつは面白いな。良いぞ。戯れに付き合ってやろう」

 大蛇はまた、空気を絡めとるように舌を出す。本当に機嫌が良さそうだ。

「なぜ機嫌が良いのですか?」───Aは片手に手帳を取り出し、暗がりと戦いながらペンを紙に走らせる。

 大蛇は「そりゃあ人間が蛇の神社を建ててな」と彼は嬉々として語り出した。

「まだまだ蛇も忘れられた訳ではないと思った訳だ。機嫌もようなろう」
「人間に忘れられたら嫌ですか?」

 そのAの質問に、大蛇は鼻を大きく鳴らしながら答える。鼻息だけで猫又は後ろに転がって行ったが、Aの身柄だけは鴉天狗が押さえてくれたゆえ大丈夫だった。

「贔屓だ! 贔屓!!」と喚く猫又がなんだか不憫に感じる。
 先ほどまでの「俺様を頼れ」とはなんだったのか。まあそこが彼の愛嬌でもある。

「蛇は長い間、人間と親密な関係にあった。例えば干支。例えば昔話。人間の運気にも携わったりもしたな。───昔の人間は、我々に対する敬意を常に忘れなかった故、手を貸そうと言う気も起きたものだ」

 今も蛇の話は日常で出たりもする。それこそ干支だったり、また運勢であったり。

◇→←◇



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.6/10 (24 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
9人がお気に入り
設定タグ:妖怪 , オリジナル   
作品ジャンル:ファンタジー, オリジナル作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

かぁびぃ(駄作者)(プロフ) - 無気力アイスさん» ありがとうございます!!(*´ω`*)そう言っていただけて大変光栄です(*´・ω・`)bこれからも頑張ります!! (2018年4月5日 17時) (レス) id: f00a385698 (このIDを非表示/違反報告)
無気力アイス(プロフ) - 格好いいです!こういうのを探してました。 (2018年4月5日 16時) (レス) id: 5c8f78dfab (このIDを非表示/違反報告)
かぁびぃ(駄作者)(プロフ) - 森田菜々子さん» ありがとうございます!オリジナル作品がランキング入りしたのは初めてですので凄く嬉しかったです!\(^o^)/ (2017年11月26日 1時) (携帯から) (レス) id: 87e86307e6 (このIDを非表示/違反報告)
森田菜々子 - かぁびぃさん、ランキング最高4位おめでとうございます! (2017年11月25日 20時) (レス) id: 52dd8ac394 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:かぁびぃ(駄作者) | 作成日時:2017年11月24日 14時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。