検索窓
今日:2 hit、昨日:1 hit、合計:7,524 hit

03:出会い ページ5

汽車は変わらず揺れている。───ごとん、がたん。と。

 偽汽車はAの傍に立ったまま黙っていた。彼は細身で背が高い。
 座った彼女を見下ろすなど造作もなかった。

 そうだ。Aが文を推敲している間、彼女が妖怪と出逢うに至った経路を語ろうか。それがいい。

 あの駅の跡地には、元より力の弱い妖怪がよく溜まっていた。
 猫又たちの群れなんかが夜な夜な集まっては騒ぐことで多少有名であったのだ。

 だが、今Aとともに行動するあの生意気な猫又。彼はどうも力が強く、また群れるのを異様毛嫌いするもので、いつも独りであの駅にいたものだ。

 だがそれが、鴉天狗と話すきっかけにもなった。

 たまたま、あちらこちらを見物しながら移動を繰り返していた当時の鴉天狗。彼には元々専用の神社や祠があったのだが、時代が進むことに妖怪たちは人間の記憶からは薄れていき、神社も祠も廃れていった。

 それから古くなりすぎたそれらは取り壊され、公園やビルに姿を変えた。
 他はどうかは知らないが、鴉天狗は「仕方無きこと」と割り切っており、こうして住む場所を無くしたのを口実に日本中を回っていたのだった。

「やい、強そうなカラスだな!」

 身なりは非常に美しい天狗ゆえ、猫又が『強そう』と評したのも無理はない。
 こうして猫又の喧嘩早さのおかげで、鴉天狗と知り合うきっかけになったのだった。

 喧嘩の行方? それはまた暇なときに聞かせよう。

 そんなこんなで二人が親睦を深めたのが秋の終わり頃。
「もう寒くなるぞ」と人間たちが冬着を出してくる季節になろうとした時だった。

 とまあ妖怪の事ばかり語ったが、変わった人間もたまにはここにやって来る。
 だが、大抵人間には妖怪は見えぬものだ。

 信じていないからである。
 現代の色に染まりきった現実的な心と、何にも増して余裕のない瞳に、妖怪を映している暇はない。妖怪が入り込む心のゆとりもない。

 妖怪も人間に深い興味は抱かぬもので、たまにちょっかいを掛けては騒ぎになる程度だった。


 だが、Aは違った。

◇→←◇



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.6/10 (24 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
9人がお気に入り
設定タグ:妖怪 , オリジナル   
作品ジャンル:ファンタジー, オリジナル作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

かぁびぃ(駄作者)(プロフ) - 無気力アイスさん» ありがとうございます!!(*´ω`*)そう言っていただけて大変光栄です(*´・ω・`)bこれからも頑張ります!! (2018年4月5日 17時) (レス) id: f00a385698 (このIDを非表示/違反報告)
無気力アイス(プロフ) - 格好いいです!こういうのを探してました。 (2018年4月5日 16時) (レス) id: 5c8f78dfab (このIDを非表示/違反報告)
かぁびぃ(駄作者)(プロフ) - 森田菜々子さん» ありがとうございます!オリジナル作品がランキング入りしたのは初めてですので凄く嬉しかったです!\(^o^)/ (2017年11月26日 1時) (携帯から) (レス) id: 87e86307e6 (このIDを非表示/違反報告)
森田菜々子 - かぁびぃさん、ランキング最高4位おめでとうございます! (2017年11月25日 20時) (レス) id: 52dd8ac394 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:かぁびぃ(駄作者) | 作成日時:2017年11月24日 14時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。