１０：空を駆けよ、若き竜 ページ19
滝を駆け登り、またぼちゃりと聞こえた水の音。
ばしゃりと鳴る音だけが、そこに何かしらの生き物がいることを示している。
｢もっと、近くで見たい｣──Aは覚束ぬ足取りで滝の傍に近付いていった。
その横を、猫又と鴉天狗がぴたりと着いて来た。Aが転ばぬよう、あるいは湖に落ちぬよう細心の注意を払いながら。
だが、彼女の好奇心を止めようとは思わなかった。
滝の側では、水飛沫が跳ね上がっている。｢近付き過ぎると濡れちまわねェか？｣と猫又が懸念しているが、Aはさらに近くに寄った。
──もっと近くでそれを見たいと思ったのだ。もっと記憶に焼き付けたいと、そう思った。
｢ほれ、また跳ねるぞ｣
鴉天狗の言葉にAも息を呑む。滝はかなり近い位置でごうごうと鳴っていた。滝の側は風も強い。
大きな鯉が、また勢いよく滝を駆け登る。
不思議な景色だった。落ちてくる滝を駆け上がるなど普通に考えて出来るのだろうか？ とAは思う。
｢それが出来るわずかな鯉だけが、竜になる｣
猫又がふたつに別れた尻尾を揺らしながら、そう答えた。
全ての竜が滝登りの果てでそれになったわけではない。鴉天狗が言うには、滝登りの習慣は中国から流れてきたものらしい。
そもそも今よりずっと昔、日本に竜はいなかったそうだ。
日本に根付く妖怪は基本的に大人しいものが多く、また人間が大好きで、そして堪らなく悪戯好きなのだと。
｢一部を除いて、だがな。──何事にも例外がある｣
鴉天狗はそう言って、この話を終いにした。
Aはまた文字が雑になるのを覚悟でメモ帳にペンを走らせる。どれも面白く、また生の話は迫力があった。
｢A！ 登りきるぜ！｣──猫又の声でAと鴉天狗は弾かれたように滝を見た。初めから見てはいたが、改めてこちらの世界に引っ張り戻されたような不思議な感覚だ。
鯉は落ちては登り、落ちては登りをただひとりで繰り返し、今や滝の上の方にいた。
「落ちないで｣Aはそう拳を握り締める。
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かぁびぃ(駄作者)(プロフ) - 無気力アイスさん» ありがとうございます！！(*´ω｀*)そう言っていただけて大変光栄です(*´･ω･｀)bこれからも頑張ります！！ (2018年4月5日 17時) (
レス) id: f00a385698 (このIDを非表示/違反報告)
無気力アイス(プロフ) - 格好いいです！こういうのを探してました。 (2018年4月5日 16時) (レス) id: 5c8f78dfab (このIDを非表示/違反報告)
かぁびぃ(駄作者)(プロフ) - 森田菜々子さん» ありがとうございます！オリジナル作品がランキング入りしたのは初めてですので凄く嬉しかったです！＼(^o^)／ (2017年11月26日 1時) (携帯から) (レス) id: 87e86307e6 (このIDを非表示/違反報告)
森田菜々子 - かぁびぃさん、ランキング最高4位おめでとうございます！ (2017年11月25日 20時) (レス) id: 52dd8ac394 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：かぁびぃ(駄作者) | 作成日時：2017年11月24日 14時
