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06:また明日 ページ11

『白い鱗は半透明に透き通っており、………はなんとも言えぬ風が吹いた。
 瞳は真っ赤で鋭い。ただ爛々と光を輝かせる奥には優しさも伺える。
 人間と共に歩んだ事を今でも忘れてはおらず、それを重んじていた』

 途中、あまりにも汚い文字があり読めなかったが──まあメモにしてはずいぶん丁重に書きすぎたものだとAは一人で反省する。
 最後あたりに書き殴ったような字で『チョコ食べない』『幸運』とだけ書かれていて、こちらの方がメモらしいなと苦笑いする。

 そしてメモ帳を閉じて、かたんかたん揺れる汽車の中でうとうとしながら大蛇について思い返した。
 「大蛇は元気でしたか?」
「相変わらず偉そうでな! 何にしても彼奴の息の凄いことよ。本当どうにかなんねェのかよ、あれ」
「なるほど。……しかし"偉そう"と言うレベルでしたら、猫又も良い勝負をするのでは?」
「言えてるな」
「な、何だとてめえら! 表出やがれ!!」

 室内で響く猫又の声さえ、今のAにとっては子守唄も同然のようで。
 かくん、かくんと少しずつ微睡みに呑まれていく。

 時間にして現在は七時を回った所か。部活が終わり、駅に到着するまでがだいたい六時を若干回るくらいだ。

 つまり、この妖怪たちのお世話になるのは一時間弱ほど。短いようだが、Aにも帰りを待つ家族がいるので仕方がない。

「ほら、もう少し起きてろよ」───猫又から顔をぺちぺちと叩かれ、Aはゆっくり顔を上げる。
 何て事はない。早くも見慣れた二足歩行の猫がいるだけだ。

 またこくこくしていると、偽汽車が「疲れたんでしょうね」とAの横に座る。
「おい! 人間の世界じゃあそいつァせくはらだぞ! せくはら!!」と猫又が怒鳴り付けてきたが、おそらく正しい『セクハラ』の意味は解っていない。

「お前は小さなことでうるさいな」
「そりゃあお前のことかい鴉天狗よ。いつも小言が喧しいったらねえ」

 そんな会話を朧気に聞いていると、突然肩を揺すられてAは目を覚ました。
 偽汽車がぎざぎざの歯を見せながら笑っている。何事かと思えば「駅に着きましたよ」と偽汽車が言った。

◇→←◇



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設定タグ:妖怪 , オリジナル   
作品ジャンル:ファンタジー, オリジナル作品
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かぁびぃ(駄作者)(プロフ) - 無気力アイスさん» ありがとうございます!!(*´ω`*)そう言っていただけて大変光栄です(*´・ω・`)bこれからも頑張ります!! (2018年4月5日 17時) (レス) id: f00a385698 (このIDを非表示/違反報告)
無気力アイス(プロフ) - 格好いいです!こういうのを探してました。 (2018年4月5日 16時) (レス) id: 5c8f78dfab (このIDを非表示/違反報告)
かぁびぃ(駄作者)(プロフ) - 森田菜々子さん» ありがとうございます!オリジナル作品がランキング入りしたのは初めてですので凄く嬉しかったです!\(^o^)/ (2017年11月26日 1時) (携帯から) (レス) id: 87e86307e6 (このIDを非表示/違反報告)
森田菜々子 - かぁびぃさん、ランキング最高4位おめでとうございます! (2017年11月25日 20時) (レス) id: 52dd8ac394 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:かぁびぃ(駄作者) | 作成日時:2017年11月24日 14時

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