【及川徹】重ねて、忘れて純愛【HQ】 (ページ10)

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及川side

｢ハイボールと追加の品、お待たせしました～！｣

よく通る声でそう言いながら、店員さんは営業スマイルを引っさげて追加のメニューを持ってきた

Aさんは少し眠そうにしながらも追加のハイボールのグラスを口元で傾ける。そんなにお酒強くないと思うけど大丈夫だろうか。

｢そう言えば、Aさんはなんでこの大学に来たんですか｣

話のネタもあまり浮かばず、俺は焼酎のグラスに口をつけながらそう尋ねた

彼女は枝豆を片手に持ちながら " うーん…" と唸り、少しの間の後小さな声で話し始めた

｢元々興味のある学科だった。それに憧れの人がこの大学でさ、院に行ってると思って進んだの………まぁ、居なかったんだけどね｣

そう言い終えると " ははっ、馬鹿らしい理由だよね " と乾いた笑いを漏らす

その時、
何となく考えていた事が頭の中でひとつに繋がった

｢及川君は？｣

｢俺は兄を追いかけてここに来ました。……勉強面では目標にしてましたから｣

｢……へぇ、そうなんだ｣

俺の顔を見ながら、少し声のトーンが下がり気味でそう相槌を打つAさん

Aさんはよく、俺のことを見てる

自意識過剰とかじゃなくて、本当に、特に顔をよく見られてる。この容姿だし、初めは俺の事好きなのかな？くらいにしか考えて居なかった

でも研究室で聞いた " 俺と飲むのは辛い " という発言

俺のことが好きなら、酔った勢いであわよくば……なんて思うだろう。でも多分アレは本音。

そして、今

兄ちゃんと高校の時の俺が写った写真を見せたら、いつもより顔を見られるし、何処か悲しそうだ

大学の入学理由………憧れの人……ね

俺の兄が卒業した時、Aさんは丁度入学
院に進んでいると考えてもおかしくないし、時期的にも有り得なくはない

それじゃぁ……

彼女が俺の事をよく見てるのって

｢………重ねられてる？｣

グラスを口元まで近づけ、とても小さな声で呟く

確かに兄弟だし顔は似てる

でも、それって

なんか嫌だ

それじゃあ彼女が俺に向けるこの視線も想いも、全部全部俺じゃなくて俺と重ねた兄ちゃんへのモノって訳だろ？

…………ムカつく

｢………なんかな。｣

俺はやるせない気持ちとイライラを、胃の奥へ流し込むように残りの焼酎を飲み干した

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