【及川徹】重ねて、忘れて純愛【HQ】 (ページ40)

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時間は少し遡る。

及川side

｢………ふぅ……｣

俺は大きな建物を前にそう大袈裟に息をつく。
久々にやってきた病院に少し緊張する

高校の時に紹介状でここに来て、選手辞めて診察に行かなくなってからは音沙汰なしだったけど………あの時とは色々状況が変わった

俺は少し深呼吸してから病院のドアをくぐった

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｢いやぁ、久しぶりだね｣

｢お久しぶりです……先生｣

半年ぶりだろうか。先生はそう笑いながら俺の肩をバシバシと叩くので、俺も苦笑いで返した

｢いやー、バレー辞めたって聞いてビックリしたよ。せっかく上手だったのに｣

｢ははっ、ありがとうございます。………あの、今回はそれでお話が…………｣

俺が話を切り出そうとした時だった

｢……もう一度、バレーがしたくなったか？｣

先生は何もかも見透かしたようにそう言って微笑む
俺は思わず息を飲んで押し黙った

その俺の様子を見て先生は笑いながらこう話した

｢いや、人生のほとんどをバレーにかけていた君が……そう簡単に足を洗うとは思えなくてね｣

｢………｣

流石だと思った。
長年、色んな種目の選手達を見てきた彼だからこそ言える台詞だと感心した。

｢………はい。｣

｢うん、やっぱりそっちの方が君らしい｣

先生はそう言ってまたニコリと笑った

そして話は手術の話になった。

｢………と言っても、及川君の膝は思った以上にダメージが酷くてね。｣

先生はそう言いながらカルテに視線を落とす
自分の体を苛めては、その倍の手間をかけて労わったつもりだった。

でも確かに、高校までは岩ちゃんが無理矢理にもで止めてくれてた。それが無くなった大学で、ついついオーバーワークが続いてしまい、ついに俺の膝は悲鳴をあげた。

長年の蓄積もあるのだろう

｢……手術……するかい？｣

｢……………まだ、決めきれません｣

俺はそう曖昧な返事を返してしまう

手術の成功率確率も決して高いわけじゃない。

それに手術後のリハビリも相当キツいと聞いた
でも、リハビリだけなら全然苦じゃない。

俺が考えてしまうのは、その後の事だ。

もしバレー復帰をしたとして、前以上のパフォーマンスが出来るだろうか？

俺は、天才共と対等に争えるだろうか？

俺らしくない、自分でもそう思う。

しかし、どうしてもそんな考えが過ぎってしまうのだ

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