【及川徹】重ねて、忘れて純愛【HQ】 (ページ37)

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それからは特に何か考えるわけでもなく、彼の元へ向かった。
幸いエスカレーターや出入口は近め。

見失わないよう、小走りに及川くんの元へ向かう。

「及川くん！」

「え、Aさん？」

心底驚いた様子で、私を見る。
パッと見、怪我や何かではなさそう。
それじゃあ病気？

ここは紹介状や緊急外来でないと来れないような大病院だ。
私が1人で焦っていると及川くんが聞いてきた。

「何してるんですか？」

「あ、買い物……」

ふーん、と興味無さそうに返事をしてニヤッと笑った。
イケメンはいいな、そうつくづく思う。

ニヤニヤとした顔を隠しきれない様子で、及川くんは言った。

「もしかして心配してくれたんですか？」

「……まぁ、そうだけど」

「知りたいですか？」

「ん、まあ」

私は聞いてもいい事なのかためらいながらも、ゆっくり頷いた。
及川くんが私の隣に並ぶ。

改めて見る彼はやっぱり背が大きくて、スタイルも良くてかっこいい。

「カフェでいい？」

「はい」

そう言って首に手を当てる及川くん。
その手からはいつかにあげたハンドクリームの柑橘の匂いがする。

今でもバレーが好きなのにやらない理由、もしかして怪我なんじゃ。
そんなことが頭をよぎる。

昔の怪我ならきっと今じゃ、見ただけではわからない。
まして専門家でもない。

「Aさんは吹っ切れましたか」

「及川くんのお兄さんのこと？」

「……はい」

「まだちょっと引きずってる」

「モテモテ及川さんの腕がなりますね」

冗談めかしてそう言った。