【及川徹】重ねて、忘れて純愛【HQ】 (ページ30)

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及川side

俺は辺りを見渡して、彼女を探す

どこだ、何処にいる。

今彼女を見つけられなければ、一生後悔する！！！
そう頭の中でサイレンが鳴り響く

俺は走って彼女を探す。愛しい彼女を見つけるため、息が上がり苦しくなりながらも走り続ける

｢はぁ……はぁ……はぁ……｣

汗が滲み肩が上下に動く
建物の角を曲がった時、Aさんの小さな背中が遠くに見えた

＿＿＿＿＿居た！

俺は短距離を走る時よりも必死に地面を踏み込む
そして彼女の腕引いた

｢Aさんｯ！！｣

｢………ぁ……及川……君｣

Aさんは目の下に涙をいっぱいためて、泣きそうなのを必死に我慢していた。そしてその涙が全て兄の為だと思うと少し苛立ちを覚える。

｢どうして、……居なくなったんですか｣

｢……べつに、居なくなったとかじゃ｣

そう言い訳を口にしながら下を向く彼女
嘘つけ、なら、なら何で……！

｢なら！！なんで俺の目を見てくれないんですか！｣

俺の心の言葉は荒々しく口に出ていた
幸いなことに周りには人は居ない

｢そ……れは｣

彼女の目に溜まった涙が溢れそうになるのを見てハッとする。俺は、こんなことが言いたいんじゃないのに……！

俺は一回冷静になって大きく息を吐く

そして優しく微笑みかけながら

｢Aさん、ちょっとお話しませんか？｣

そう言って彼女の腕を引いた

.

俺は大学の中でも一際人気のないベンチに向かい、彼女を座らせる。そして近くの自販機でココアと缶コーヒーを買ってベンチに戻る

｢Aさん、どっちがいいですか｣

｢……悪いよ｣

｢良いから｣

ここに来てまで遠慮する彼女にそう言い聞かせ、二つの缶を見せる。すると彼女は少しだけこちらを見てココアの缶を受け取り両手で包んだ

｢……ありがとう｣

小さくか細い声でお礼を言う彼女
それを聞いたあと、俺はゆっくりとした口調で問いかける

｢無理に話せとは言いません。でも教えてくれませんか？……………泣きそうな理由。｣

しかし、しばらく沈黙が続く

やっぱ無理か。

そう思いながら手に握られた缶コーヒーを見つめていると、彼女はポツリポツリと震える声で話し始めた

.