【及川徹】重ねて、忘れて純愛【HQ】 (ページ27)

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「及川くん」

ハロウィンパーティーも解散し、習慣化してしまった及川くんとの帰り道。
私は思い出したように及川くんに声をかける。

及川くんが私を上から優しく見下ろして、首を傾げた。
カバンから出した、小さめの紙袋を渡す。

「なんですか？」

「プレゼント」

「なんでですか」

「ハッピーハロウィン？」

なんで疑問形なんですか、と笑う及川くん。
嬉しそうにテープを取って、中身を見る。

オシャレなハンドクリーム。
爽やかな甘い匂い、柑橘系の香りがするハンドクリーム。

「及川くん、手が綺麗だからさ」

先輩からのプレゼント、と言おうとして及川くんを見上げる。
及川くんが顔を真っ赤にして私から顔を背ける。

私はさっきのお返しだ、なんて思いながら笑って言った。

「トッリク、オア、トリート？」

「お菓子、持ってないです」

「じゃあトリックだね」

イタズラなんか考えてないけど、どうしようかな。
そうこう考えてるうちに、アパートの前に着いてしまった。

私が階段をのぼろうとすると、及川くんが言った。

「ハンドクリームありがとうございます、イタズラしないんですか？」

「されたいの？」

「……そういうわけじゃ」

「わかってる、じゃあね」

私は及川くんに背を向けて、階段に足をかけた。