【及川徹】重ねて、忘れて純愛【HQ】 (ページ12)

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ふわふわとする頭、真っ直ぐ歩けているのかも分からない。急激な睡魔に襲われる

｢……んー、眠い｣

｢もう少しで家ですから｣

そう言う及川君は、口調こそ少しキツいが真っ直ぐ歩けるよう支えてくれてるのが分かる

あー、ダメだ。彼はお兄さんじゃないのに
どうしてもあの人に見えてしまう。

及川……及川かぁ……

及川先輩。なんて……
私は恥ずかしくて呼べなかっただろうなぁ

下の名前、なんて言うんだろ
でも知ったところでどうするのよ、私

そんなことを考えてると歩いているのに眠くなる
及川君が支えてくれてるからか益々寝そうだ

｢…………お……いかわ……さん｣

｢っ………Aさん、起きて下さい｣

及川君は私の体を軽く揺らして起こそうとする

だが私は既に酔っ払い。眠気は飛んだとしても礼儀や理性やストッパーは外れている

｢………先輩……んー……｣

｢先輩？…………あぁ｣

私の呟きに何処か納得したような彼
酔っ払いがその異変に気づくわけもなく、フラフラと一歩を進める

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｢ほら、家着きましたよ｣

｢………ありがと｣

夜風に当たりながら歩いたおかげで先程よりは酔いが覚めた。私はお礼を述べて家の鍵を鞄から取り出す

｢後は大丈夫ですよね｣

｢うん…ごめんね。大丈夫だよ｣

及川君の質問にそう返しつつ、鍵穴に鍵を差し込む

｢それじゃ、俺は帰りますね。……また明日｣

" また明日 "

彼はお兄さんじゃないのに、何故かそのワードが嬉しく感じてしまう。

あぁ、顔が似てるせいだ

頭では分かってる。
嫌な程理解してる。

でも、行動はまた別らしい

｢うん……また明日……" 及川さん "｣

玄関に入り、彼の顔を見上げながら。
私は無意識のうちにそう別れを述べていた

しかし、私は気づかずそのまま家のドアをバタンと閉め、鍵を掛けた。

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Aを家まで送った後、怒りを含んだ早足で自宅まで歩く彼は、彼女が別れ際に言った言葉が気持ち悪いほど鼓膜に張り付いていた

＿＿＿" 及川さん "

彼は整った顔を不愉快そうにムッとさせ

｢…………やっぱ重ねてるじゃん。｣

彼の独り言は冷たい風が吹く夜道に消えた

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