懐古 ページ22
「とりあえず夜までは帰ってこねぇから。準備すんなら了承取った後の方がいいだろ。それまで適当にその辺に居ろ。」
かっちゃんが何を考えているのか、正直わからなかった。
私には家出を引き留めるような両親はいないし、そもそも一人暮らしだったわけだけれど。彼はそうもいかないだろう。世間体的に年頃の高校生が一つ屋根の下なんて、多分良い事じゃない。
それにご両親はしっかりと常識が備わり、私たちを客観視したうえで的確な説教をしてくれる人たちだ。母親にひっぱたかれるのも説得に苦労するのもかっちゃんだ。
引き留めようとすれば、期限の1か月間だけでいいと言う。
それだけでいいからここに居ろ。
そういった。
台詞を吐き捨てて勢いよく扉を閉めたかっちゃんは、どこか別の部屋へ行ってしまう。
意外にも整頓された室内を見て、適当な漫画に手を伸ばした。
それは昔流行っていた王道少年漫画で、私も棚に並べていたなぁと思い出す。
主役がオールマイトみたいにかっこいいのだと、デクくんが私に教えてくれたのがきっかけだった。こっそり商店街の書店で全巻そろえて、隠し事でもするみたいに、二人でこっそり読んだのだ。
「...かっちゃんも持ってたんだ。」
静寂の充満した彼の自室で、ひとりごちる。
テレビの前でヒーローに羨望のまなざしを送り、嬉々として正義を語る彼。
そんな姿を知っていたから、私はかっちゃんに読んでみてよなんて一巻を貸していたのに。結局漫画と共に「クソつまんなかった」という何の配慮も感じない一言を受け取ったのだ。
けれど棚に並べられた漫画は一巻目だけが抜けている。
普段自分の話なんてしようとしない彼のプライベートを暴くのは案外楽しくて、人の家に上がり込んでおきながら、私は容赦なくアルバムに手を伸ばした。
『折寺小学校 １-１』
そう書かれた薄いファイルには、しかめっ面のかっちゃんが何枚も収められていた。
かっちゃんこういうの自室に保管しとくタイプか...。
「うわっかわいい。」
「誰が可愛いだコラ。」
「わっ！」
写真に夢中になっていた私は、帰って来たかっちゃんに気付けなかったようで。
突然の声に驚いて変な声を出した。
「あ、これデクくんだ。」
「お前不細工な顔してんな。」
「うるさい。このかっちゃんなんかものすごい表情！」
「てめぇよりましだ。」
そう言う彼のトーンは、いつもより少しだけ柔らかい。
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23.4度(プロフ) - ましろんぬさん» 他も見てくださったんですか....泣ありがとうございます！ご感想本当に励みになります！ (2017年10月12日 19時) (
レス) id: 8c7360ac03 (このIDを非表示/違反報告)
23.4度(プロフ) - ぼうﾆﾝさん» 遅くなり申し訳ないです！こちらでもコメントありがとうございます...!!ご感想頂き本当に嬉しいです。ついったーの方でもよろしくおねがいします！ (2017年10月12日 19時) (レス) id: 8c7360ac03 (このIDを非表示/違反報告)
ましろんぬ(プロフ) - 素敵なお話ですね。他の作品も好きです。更新頑張ってください。 (2017年10月9日 0時) (レス) id: 1785f6c6df (このIDを非表示/違反報告)
ぼうﾆﾝ(プロフ) - キャラの矢印の方向やストーリーがどすとらいくすぎて感動しました泣 これからも応援しています!! Twitterでイラスト拝見させていただきましたが､小説もクオリティ高くて尊敬しちゃいます~!! (2017年10月5日 21時) (レス) id: 64374fa942 (このIDを非表示/違反報告)
23.4度(プロフ) - お気に入りありがとうございます！更新滞り気味で申し訳ないです...。この後もお付き合いいただければと思います！ (2017年9月30日 17時) (レス) id: 8c7360ac03 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：23.4度 | 作者ホームページ：http://nanos.jp/aoikasou/
作成日時：2017年9月7日 20時
