叶わないはずの恋 Ninomiya (ページ9)

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9 無自覚（加音side）ページ9

和くんに振り払われた手を下すことができないまま、彼が去っていった先を見つめるA。

その顔には明らかに動揺の色が見て取れる

この兄妹はやっぱり特殊だとは思う

親が2人を残して出て行ったことも、その状況を助ける人がいなかったことも

私がAと知り合ったのは中学の入学式の時で、その日も一緒に登校してきた彼らを見た第一印象は

恋人同士

だった

ほとんど会話せず歩いているのになぜかそう思った

だから後から兄妹だと知ったときは初め信じられなかった

環境のせいか元々の性格のせいか、大人びて現実的なAはすぐに私の憧れになり、いつしか支えになりたいと思った

そのうち下校の時にAを待つ和くんを見て気づいた

あぁ、彼はそうなんだ

と

Aを見つめる眼差しが、さりげなく車道側を歩く仕草が、もう全てを物語っていた

Aもそうだ

いつも寂しそうに彼を見つめる瞳には、兄妹の情以上の色がある

でも彼女はそれに無自覚だった

おそらく今日、今、この瞬間までは。