26 かけがえのないもの（あなたside） ページ26
加「…あのねA、私たち家族、引っ越すことになったの…」
そう加音に告げられたのは、冬休み明けすぐのこと
休日に加音から遊びに誘われ楽しく過ごしていた夕暮れ時の公園のベンチ
あまりに唐突なその言葉の意味をすぐには理解できなかった
あ「…え？」
口をついて出た言葉はただ一言でびっくりするほど掠れていた
加「お父さんの転勤で、アメリカに…
ついこないだ決まったことで私も正直まだ呑み込めてない」
あ「……」
中学の入学式の時真っ先に声を掛けてくれてすぐ親友になった
これからもずっと一緒に笑って過ごしていくんだと、信じて疑わなかった
加「A…？」
あ「…いいなぁ、アメリカ！」
もう重くなりすぎた空気を、明るい声で思いっきり吹き飛ばそうとした
加音は一瞬ギョッとして、困ったような笑顔で私の肩に寄り掛かった
あ「アメリカに行っても私たち友達だよね？」
加「バカ死ぬまで親友だよ…」
彼女の言葉はすっと身体に染みて、意識するより先に涙が出た
あ「いつ引っ越すの？」
加「実は明後日…」
余程急なお父様の転勤らしい
明日からまた学校だから見送りは難しそうだ…
そう考えてまた涙が滲んできた時
加「…和くんと、幸せになってね
2人の立場じゃ難しいかもしれないけど、私はずっと応援してるからね」
と、優しい声が聞こえてきた
私はなんて良い友人を持てたんだろうと、温かい気持ちが胸に残った。
家に帰って和に加音のことを伝えたら、驚きの声をあげてその後は何も言わずに抱きしめてくれた。
中学に入学して1番にできた私の大親友
いつも私を支え、共に笑い泣いてくれた
かけがえのない私の宝物
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作者名：にのもと | 作成日時：2021年1月16日 1時
