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保護 Ritsu.D ページ8

夜8時。サッカーの練習が終わり、ただひたすらに暗い道を歩く。

ふと公園のほうに目をやると、ベンチの上に横になっている小さな女の子がいた。
この時間にこんな小さな子がひとりでいるのは流石に見逃せない。そっと近づいて声をかけてみる。


「お嬢、大丈夫か?どないしたん?」

『···!!』


女の子は俺の顔を見ると、怯えた様子で小さく、ごめんなさい、と言った。


「大丈夫、おにいは悪い人ちゃうで。なんもせえへんよ」

女の子は俺を疑いの目で見つめてきた。
こういうときの対処法はいくらか叩きこまれているのだろうから、当然の反応のといえば当然の反応なのだろう。


「そういえばまだ名前言うてへんかったな。おにいは律っちゅうねんけど、お嬢はなんていうん?」

『···A』

「Aちゃんな。了解。Aちゃんこんなとこにずっといて寒かったやろ。おにいと一緒に交番行こか。そのほうが安全やし、お父さんお母さんが迎えにきてくれるやろ」

『いや!いやいやいやっ!!』


俺がそう言うと、Aちゃんは突然耳を塞いで、首を勢いよく横に振った。

『またおとうさんのことおこらせちゃう···。ごめんなさいごめんなさいごめんなさい·····』


その異常な拒絶反応を見て、彼女が普段父親から何をされているかはすぐに見当がついた。直後、未だかつてないほどの怒りが心の底をから湧きあがってくる。


「···ほんなら、おにいの家においで。俺はAちゃんのおとんみたいことは絶対せえへんよ」


Aちゃんは耳から手を離し、震えた声で俺に訊く。


『···ほんと?』

「···ほんと。やから、もう大丈夫やで」



手を差し出してみると、彼女は恐る恐る手を重ねた。


『りつくんのこと···しんじる』

「···ありがと。絶対裏切らないって約束する」


小さな手から伝わる力を了解と受けとって、ふたり並んで帰路についた。

_ Ko.I→←ナンパ Ao.T



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茜屋(プロフ) - kangarooさん» 良かったです🫶リクエストありがとうございました!! (5月16日 16時) (レス) id: 556e637f1a (このIDを非表示/違反報告)
kangaroo(プロフ) - 茜屋さん» リクエスト書いてくださってありがとうございます!!めっちゃきゅんきゅんしました...。 (5月16日 15時) (レス) @page29 id: a52eba175e (このIDを非表示/違反報告)
茜屋(プロフ) - kangarooさん» 承りました!リクエストありがとうございます!! (5月11日 6時) (レス) id: 556e637f1a (このIDを非表示/違反報告)
kangaroo(プロフ) - コメント失礼しますっ。リクエストで、傷跡シリーズの谷口書いてほしいです!いつもきゅんきゅんな物語ありがとうございます!! (5月10日 22時) (レス) @page28 id: a52eba175e (このIDを非表示/違反報告)
茜屋(プロフ) - おさすみさん» 了解です!リクエストありがとうございます💞💞 (5月9日 6時) (レス) id: 556e637f1a (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:茜屋 | 作成日時:2023年1月30日 8時

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