八輪 ページ9
そのことを実感した途端、安心からか猛烈な眠気に襲われる。
外はまだ土砂降りなのか、ざあざあと襖越しに音が聞こえる。
うとうとする中で、私は安心とともに、鼓動がせわしなく騒いでいるのを感じていた。
(とっても安心するのに……何でだろう。
ドキドキする)
頭を押し付けているそーくんの胸の鼓動も、心なしか早い気がして。
じわりと頬が熱くなるのを感じながら、襲ってくる眠気に身を任せて瞼を閉じた。
眠りに落ちる直前、そーくんの声を聞いた気がした。
「おやすみ」と言ったそーくんの声は、今まで聞いたことがないくらい優しかった。
.
「お、お、沖田さんんんんんん!?!?!?」
次の日の朝。
私は山崎さんの叫び声で目が覚めた。
「ん……あ、おはようございます山崎さん」
「え、あ、うん。
おはようAちゃん」
ゆっくりと身体を起こしながら挨拶をすると、そーくんも欠伸をしながら上体を起こした。
「何でィ山崎。朝からうるせェな」
「え、いや、え、だって!!!」
「おい山崎。朝からうるせェぞ」
そう言ってあわあわしている山崎さんの後ろから十にぃが顔を出す。
「ンで総悟の部屋の前……」
しかし。
そーくんの部屋を覗いた十にぃはピシリ、と効果音がつきそうな勢いで動きを止める。
「そ……そそそそ総悟???
こここここりゃあ一体どういうことだ?????」
十にぃのその様子に私は首を傾げ、そーくんは、はあぁ……と大きなため息をつく。
「二人とも落ち着いてよく見なせェ。
ちゃんと二人とも服着てるでしょうが」
「え、あ、そうですね!!?」
「い、いいいいいや、おおおお俺は分かってたし???
てか総悟お前何言ってんの???」
二人のおかしい様子に困惑していると、そーくんが私に言った。
「A。オメーは着替えて来い」
「う、うん。分かった。また後でね、そーくん。
昨日はありがとう」
そう言って私は布団から立ち上がり、まだ動きがぎこちない十にぃと山崎さんの横を通り抜けてそーくんの部屋を後にした。
.
着替え終わって食堂に行くと、早速十にぃが声をかけてきた。
「A」
「十にぃ?どうしたの?」
食堂の方から食事を受け取りながら声をかけ返すと、「あぁ、そうそう、Aちゃん」と私に朝食を渡してくれた方が言った。
「?」
顔を向けると、その方は言った。
「山野さんからの伝言よ」
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赤羽@美羽(プロフ) - サクラさん» ありがとうございます!そう言っていただけるととても嬉しいです!これからもよろしくお願いします♪ (2020年3月13日 9時) (レス) id: 8b3b438a89 (このIDを非表示/違反報告)
サクラ(プロフ) - めっちゃ面白いです!さっそくお気に入り登録しちゃいました!更新楽しみにしてます、頑張ってください! (2020年3月12日 14時) (レス) id: 319352fe0b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:赤羽@美羽 | 作成日時:2019年9月11日 7時