三十三輪 ページ48
昨日の電話で、まず開口一番に『何で帰ってきたの言ってくれなかったのよ……！』と叫んだおばちゃんは、その後おじちゃんの愚痴を散々こぼし、最後に今日会う約束を取り付けて慌ただしく電話を切ってしまった。
(昨日は私、全然話せなかったし……江戸でのこととか、お話しできたら嬉しいな)
.
ピンポーン、と戸の隣にある呼び鈴を鳴らすと、中から「はーい」と声が聞こえ、間もなく戸が開かれた。
「久しぶり、おばちゃん」
「あら、Aちゃん！
待ってたわ〜。さぁ、中はどうぞ」
「ありがとう」
促されて中に入り、客間へと通される。
家の中は以前と……私がここに住んでいた頃と、何も変わらなかった。
全体的に落ち着いた雰囲気の昔ながらの日本家屋。
「お茶持ってくるから、ちょっと待っててね」
「あ、手伝うよ」
「いいのよ。Aちゃんはここで待ってて頂戴」
「……じゃあ、お言葉に甘えて」
おばちゃんはそれを聞いてふふ、と笑うと客間を出て行った。
座布団が敷いてあったのでその上に座ると、道場の方から誰かが素振りしている声が聞こえてきた。
(もしかして……おじちゃん？)
道場にはもう門下生はいないはずだし……きっとそうだ。
……と、スッと襖が開かれて、おばちゃんが部屋に入ってきた。
「お待たせ、Aちゃん」
「ありがとうおばちゃん」
お盆の上に湯飲みを三つと急須、そしてお茶菓子を乗せて持ってきたおばちゃんは、机を挟んで私の真正面に座る。
おばちゃんは私にお茶を入れた湯呑みを手渡しながら言った。
「あぁ、そうそう。
このお茶菓子ね、とっても美味しいのよ。
食べてみて」
「そうなの？ありがとう」
お礼を言って、桜が象られたお茶菓子を一つ手にとり、口の中に入れる。
口の中でほろりと溶けていったそれは、ほんのり甘くて。
「美味しい！」
思わず声を上げると、おばちゃんは「よかったわ」と嬉しそうに笑う。
「これね、ついこの間お隣さんからね、京に行ってきたからって、お土産に貰ったの」
「京？」
「そう。
いいわよねぇ……私も死ぬ前に一回行ってみたいわぁ……」
一つ憧れるようにため息をついたおばちゃんは、「そういえば聞いてAちゃん！」と再び口を開く。
「何？」
「あの人がね、酷いのよ〜。
私が「京に行きたい」って言ったら、何て言ったと思う？
「そんな金どこにあんだ」って一蹴よ？一蹴！
せめてもうちょっと考える素振り見せてくれても良くない？」
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赤羽@美羽(プロフ) - サクラさん» ありがとうございます！そう言っていただけるととても嬉しいです！これからもよろしくお願いします♪ (2020年3月13日 9時) (
レス) id: 8b3b438a89 (このIDを非表示/違反報告)
サクラ(プロフ) - めっちゃ面白いです！さっそくお気に入り登録しちゃいました！更新楽しみにしてます、頑張ってください！ (2020年3月12日 14時) (レス) id: 319352fe0b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：赤羽@美羽 | 作成日時：2019年9月11日 7時
