三十一輪 ページ46
でも、そんな複雑な感情が錯綜する中、やはり一番に胸を占めているのは、『寂しい』という感情だった。
(この家に、一人ぼっちなのは……やっぱり、寂しいなぁ……)
そんなことを考えていたら、ゆきを抱きしめていた腕に思わず力が入ってしまったらしく、ゆきが苦しそうに身動ぎした。
「あ……ごめんね！」
腕の力を緩めると、解放されたゆきはジッと色違いの瞳で私を見つめる。
思わず見つめ返していると、ゆきの方からふっと視線を外し、腕の中で再び丸くなって寝る態勢に入る。
何だか安心してしまい、ふっと息をついてから視線をあげると、もうそこにそーくんの姿はなかった。
(あぁ……行っちゃった)
私も、そーくんと一緒に江戸に帰りたかった。
だけれど、まだ体調が万全ではない状態で帰れば、隊士の方々に気を使わせてしまうことは分かり切っていた。
屯所の方々は、本当に私によくしてくれる。
こちらが申し訳ないくらいに。
だからこそ、私はそーくんに一緒に江戸に帰らないかと尋ねられた時に首を横に振ったのだった。
「……帰ろっか」
腕の中にいるゆきに呟き、私は家へと足を向けた。
.
あれから約1ヶ月後。
テレビでは度々真選組のニュースが流れるものの、この前のような大きな事件はないらしく、私は少し安心しながら日々を送っていた。
武州で過ごすようになってから体調が良くなった私は、牧野さんから野菜を頂いたり、今度は料理を作りに行ったり、ミツバ姉も眠る沖田家のお墓のお掃除をしたりと、元気に動き回っていた。
(こんなところを十にぃに見られたら絶対怒られちゃうなぁ……)
私はその日、暖かい日を浴びながら、縁側でゆきの背中を撫でていた。
ゆきは心地よさそうにすやすやと眠っている。
(十にぃは少し過保護気味だからなぁ……)
心の中で思わず苦笑を溢す。
そんな私には、最近密かに楽しみにしていることがあった。
それは……。
……と、その時、黒電話がジリリリリ、と鳴り出した。
思わずピクリと反応してしまい、膝の上で寝ていたゆきが目を覚ましてしまう。
そんなゆきへの謝罪もそこそこに、私は黒電話に駆け寄る。
そして、ドキドキしながら受話器を耳に当て……。
「も……もしもし……？」
『おー、A。俺でィ』
「っ、そーくん」
それは、そーくんからの電話。
そーくんはあれから、三日に一度くらいのペースで電話をくれていた。
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赤羽@美羽(プロフ) - サクラさん» ありがとうございます！そう言っていただけるととても嬉しいです！これからもよろしくお願いします♪ (2020年3月13日 9時) (
レス) id: 8b3b438a89 (このIDを非表示/違反報告)
サクラ(プロフ) - めっちゃ面白いです！さっそくお気に入り登録しちゃいました！更新楽しみにしてます、頑張ってください！ (2020年3月12日 14時) (レス) id: 319352fe0b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：赤羽@美羽 | 作成日時：2019年9月11日 7時
