二十八輪 ページ43
足元に目を向けると、食事を終えたらしいゆきが足元で丸くなっていた。
(何だか、そーくんみたい)
自由気ままで、本能のままに生きていて。
それなのに、気づくといつの間にか私の側にいてくれる。
そう思ったら何だか無性にそーくんに会いたくなって。
(おかしいな……後でまた絶対会えるのに)
そんなことを考えて、胸がキュッと締め付けられるような感覚がした。
(……早く、起きてこないかな)
そう考えてゆきを一撫でし、私はおかず作りに取り掛かった。
サラダを作り終えて野菜とお肉を炒めていると、そーくんがやっと起きてきた。
「ん……A、はよ」
「おはよう、そーくん」
「……良い匂いがすらァ。
何作ってんでィ」
「肉野菜炒め。
そーくん、今日からまたお仕事でしょう?
スタミナつけておかなくっちゃ」
そーくんはそれを聞くと歩み寄ってきて、横から私が料理しているのを覗き込んでくる。
(っ……)
そーくんの気配を近くに感じてしまって緊張していると、そーくんの髪が一箇所おかしい方向に跳ねていることに気づく。
「そーくん、髪とかした?」
「いや」
そーくんが首を横に振ったのをみて、私は思わず笑ってしまう。
「私の櫛貸してあげるからとかしたほうがいいよ。
ここ、寝癖ついてる」
そう言って寝癖に軽く触れると、そーくんはバッと私から離れて寝癖を抑える。
「……マジか……」
そう小さく呟くと、凄い勢いで回れ右をして洗面所へと走っていってしまった。
いつも比較的ポーカーフェイスなそーくんが明らかに焦っていたのが何だか面白くて。
私は暫くクスクスと笑みをこぼしていた。
.
盛り付けを終えていつものちゃぶ台の所まで運ぶと、テレビで落語を見ていたそーくんが顔を上げた。
「どうぞ」
「……サンキュ」
一通りちゃぶ台の上に載せ終わりそーくんの前に腰掛ける。
二人で手を合わせてどちらからともなく「いただきます」と挨拶をしてから食事を始める。
「朝からお肉ってどうなのかなぁ、って悩んだんだけど……どうかな?
さっぱり目の味付けにしたから食べやすいとは思うんだけど……」
「ん……美味ェ」
「本当?よかった」
そーくんは本当に美味しそうに食べてくれるから作りがいがある。
いつも大人の中でばかり生活しているせいか年相応の顔をあまり見せないそーくんだけど、食事をしている時は比較的年相応の顔をしていると、私は思う。
(喜んでもらえて嬉しいな)
68人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
赤羽@美羽(プロフ) - サクラさん» ありがとうございます!そう言っていただけるととても嬉しいです!これからもよろしくお願いします♪ (2020年3月13日 9時) (レス) id: 8b3b438a89 (このIDを非表示/違反報告)
サクラ(プロフ) - めっちゃ面白いです!さっそくお気に入り登録しちゃいました!更新楽しみにしてます、頑張ってください! (2020年3月12日 14時) (レス) id: 319352fe0b (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:赤羽@美羽 | 作成日時:2019年9月11日 7時