三輪 ページ4
けれど白猫は警戒したようにするりと十にぃの手を抜けて私の膝の上に移動し、そのまま丸くなってしまう。
私が目を瞬かせると、十にぃは居心地悪そうに頭を掻き、私に言った。
「あー……そういや、そろそろ夕飯だってよ」
「本当?」
(確かに、結構お腹が空いてるかも)
お昼にお粥しか食べていないから、かなりお腹が空いている。
「今日の晩飯はうどんだっつってたぞ。
オメェもうどん食って早く元気になれよ」
「うん」
頷いた私は白猫を撫でながら言う。
「ごめんね、私、ご飯を食べに行かなくちゃ」
すると白猫はまるで私の言葉を理解したかのように一声鳴いてひらりと膝から降り、そのまま縁側を飛び降りた。
白猫は一度だけ振り返って「にあ」と鳴くと、次こそ振り返らずに去って行った。
それを見た十にぃが「お前の言うことは聞くんだな」とどこか不貞腐れたように言うので、私は思わず笑ってしまった。
.
かなり長い間白猫と戯れていたのか、食堂に行く道すがら見上げた空には星が瞬き始めていた。
「もう動いてもいいのか?」
「うん。一日中寝てたから、回復も早いよ」
心配そうな十にぃにそう言うと、十にぃはそうか、と頷いた。
食堂に入ると、もう既に食べ始めている隊士の方がちらほらといた。
私の姿を認めた隊士の方は口々に「回復してよかった」「安心した」と言ってくださって、心配させてしまった、と申し訳なく思うと同時に心が温かくなった。
十にぃに続いてうどんを取りに行くと、山野さんをはじめとする食堂の方全員に声をかけられた。
たくさんの方が私の回復を喜んでくれたけど、山野さんには少し怒られてしまった。
「全く……無事で帰ってきてって言ったじゃない……!」
「す、すみません……」
返す言葉もなくしていると、山野さんは一つため息をついて、それから優しく微笑んだ。
「まぁ、怪我はなくてよかったわ。
ほら、これ食べて元気出しなさい」
そう言って山野さんは私に小盛りのうどんを差し出す。
「っはい……!ありがとうございます」
そう言ってうどんを受け取った私は、食堂の中を十にぃに続いて歩く。
空いている席に二人並んで座り、黙ってうどんを食べ始める。
(そういえば)
そーくんが右腕を怪我していたことを思い出す。
(もう、大丈夫なのかな)
食べ終わったらそーくんの部屋に行ってみようと考えていると、十にぃが口を開く。
「そういやA」
「?」
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赤羽@美羽(プロフ) - サクラさん» ありがとうございます!そう言っていただけるととても嬉しいです!これからもよろしくお願いします♪ (2020年3月13日 9時) (レス) id: 8b3b438a89 (このIDを非表示/違反報告)
サクラ(プロフ) - めっちゃ面白いです!さっそくお気に入り登録しちゃいました!更新楽しみにしてます、頑張ってください! (2020年3月12日 14時) (レス) id: 319352fe0b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:赤羽@美羽 | 作成日時:2019年9月11日 7時