一輪 ページ2
「……」
暖かい。
そう感じて、私は意識を取り戻す。
(布団に寝かされているみたい)
暫く微睡みの中で意識を揺蕩わせていると、襖が開く音がした。
(……誰だろう)
不思議に思うも身体を動かせずにいると、近づいてきた誰かは私の頭をふわりと撫でた。
その指の感触には覚えがあった。
この手は……。
(……そーくん?)
.
ゆっくりと瞼を開くと、驚いた顔のそーくんと目があった。
「……A」
「そーくん」
呆然として私の名前を呼んだそーくんに呼びかけ返すと、そーくんは心底安心したような笑みを浮かべた。
「気ィついたか」
「……うん」
(確か私は……)
伊東さんが反乱を起こして、それで……。
(……思い出した)
伊東さんの最期を思い出し心が痛くなっていると、そーくんは立ち上がる。
「……そ、くん?」
「近藤さんたち呼んで来らァ」
ちっと待ってなせェ、と言われ、私は頷く。
そーくんが襖をパタン、と閉めると、部屋には再び静寂が訪れた。
天井の木目をぼうっと眺めていると、バタバタバタッという騒がしい足音が近づいてきて、襖がいい音を立てて開け放たれた。
「Aちゃん!!!」
「お兄ちゃん」
痛む頭を抑えながら起き上がると、お兄ちゃんはぶわっと涙を流しながら私に抱きついてきた。
「お……お兄ちゃん……」
抱きしめられる腕の強さに苦しさを感じながら呼ぶと、お兄ちゃんはハッとして「すまん!」と私から離れた。
「もう大丈夫なのか?Aちゃん」
「うん」
頷くと、お兄ちゃんは「そうか」と安心したように笑った。
「ま、念の為今日明日はゆっくりしてろよ」
お兄ちゃんの後ろから聞こえた声に目を向けると、十にぃがタバコをふかしながら立っていた。
「……うん」
頷くと、十にぃは丁度他の隊士の方に呼ばれて出て行った。
お兄ちゃんは十にぃの後姿を見送ると、「今お粥持って来させるからな」と言って私の頭をくしゃりと撫でると立ち上がり部屋を出て行った。
お兄ちゃんが出て行くと、部屋は私とそーくんの2人きりになった。
沈黙が気まずくてキョロキョロと視線を彷徨わせていると、そーくんがポツリと呟いた。
「……んで」
「……え?」
聞き取れなくて聞き返すと、そーくんの抑えたような声が聞こえてきた。
「何で……来たんでィ」
(“何で”って……)
返す言葉を探していると、そーくんは続けた。
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赤羽@美羽(プロフ) - サクラさん» ありがとうございます!そう言っていただけるととても嬉しいです!これからもよろしくお願いします♪ (2020年3月13日 9時) (レス) id: 8b3b438a89 (このIDを非表示/違反報告)
サクラ(プロフ) - めっちゃ面白いです!さっそくお気に入り登録しちゃいました!更新楽しみにしてます、頑張ってください! (2020年3月12日 14時) (レス) id: 319352fe0b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:赤羽@美羽 | 作成日時:2019年9月11日 7時