四十輪 ページ42
ミツバ姉の幸せを願いながら蔵場さんのところに一人で乗り込んで行った十にぃは。
(どんな気持ちだったんだろう)
蔵場さんを憎む気持ち?
ミツバ姉の容態に悲しむ気持ち?
それとも……ミツバ姉の幸せを願いながら、それを壊しに行く自分の立場を受け入れる気持ち?
キュッ、と帯を締めたところで、私は意識を現実に引き戻す。
(……どれが正解だとしても)
私には、分からない。
十にぃの気持ちなんて、十にぃ自身にしか分からない。
けれど。
もし私が十にぃの立場だったら、と“想像”しただけで、胸が締め付けられる。
ふぅ、と息をつくと同時に、「Aちゃん」と呼ばれ、顔を上げる。
「……山崎さん?」
「着替え、終わった?
副長達が呼んでるよ」
「分かりました、今行きます」
そう答え、私は部屋を出る。
部屋のすぐ前で、山崎さんも喪服姿で立っていた。
「じゃあ、行こうか」
「はい」
山崎さんとは、今日の午前中に買い物に行った時に仲良くなった。
山崎さんは最初は私のことを「姫宮さん」と呼んでいたけれど、あからさまに私より年上の人にそういう呼び方をさせるのも憚られ、苗字ではなく名前で呼んで貰うことにしたのだった。
(……どうして、山崎さんは話しやすいのかな)
私の少し前を歩き先導してくれている山崎さんを見上げ、ふと思い当たった。
(雰囲気……かな)
真選組の方は、何となく(少し失礼かもしれないけれど)厳つい雰囲気の方が多いと思う。
けれど、山崎さんはどちらかというとふんわりとした雰囲気。
(……だから、か)
私達は終始無言で屯所内を歩き、門の外へ出た。
外ではお兄ちゃんがパトカーの側で待ってくれていて、私の姿を見つけると安心したように「やっと来たか」と笑った。
「待たせちゃった?」
「いやいや!全然大丈夫だよ!」
そう言ったお兄ちゃんは、私を後部座席に促す。
促されるままに後部座席に乗り込むと、先客がいた。
(……そーくん)
俯いたままのそーくんの表情は伺えない。
けれど、今日一日中ずっとこの調子であることは知っている。
朝、食堂で見つけた時も、昼間にそーくんの部屋を覗いた時も、そーくんはずっとこんな感じ。
勿論、私だって気分がいいわけでは絶対ないし、寧ろずっと寝込んでいたいくらいには精神的にかなり来ている。
でも、今寝込むわけにはいかない。
ミツバ姉との最後の時間は、1秒だって惜しいから。
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あや(プロフ) - 赤羽@美羽さん» 受験お疲れ様でした! (2019年3月1日 0時) (レス) id: a0e0346a06 (このIDを非表示/違反報告)
赤羽@美羽(プロフ) - あやさん» ありがとうございます!受験が終わりましたので、どんどん更新していきたいと思います! (2019年2月28日 19時) (レス) id: 8b3b438a89 (このIDを非表示/違反報告)
あや(プロフ) - 赤羽@美羽さん» お忙しい中更新ありがとうございます!受験頑張ってください!これからも楽しく読ませていただきます。 (2019年2月11日 19時) (レス) id: a0e0346a06 (このIDを非表示/違反報告)
赤羽@美羽(プロフ) - あやさん» コメントありがとうございます!もうすぐで受験が終わるので、そうしたらもっとテンポよく更新できるようになると思います!これからも読んでいただけると嬉しいです! (2019年2月11日 16時) (レス) id: 8b3b438a89 (このIDを非表示/違反報告)
あや(プロフ) - 初めまして。沖田さんが好きで読ませていただいています。更新ありがとうございます。ミツバ篇好きな話なので、これから主人公ちゃんもどうなるか楽しみです! (2019年2月10日 12時) (レス) id: a0e0346a06 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:赤羽@美羽 | 作成日時:2018年11月18日 2時