三十五輪 ページ37
(そーくん、凄く強くなってるね)
数年会ってなかっただけなのに、全然違う人みたい。
根本的なところ……ミツバ姉のことが大好きなところ。
十にぃを敵視しているところ。
私に優しく接してくれるところ。
根本的なところは何も変わっていないけれど。
「……何だか、違う人みたいだね」
まるで、私が知らない人みたい。
きっと私は、何も変われていないというのに。
……と、その時。
ピーピー、という無機質な音に、ハッと顔を上げる。
急に集中治療室の中が騒がしくなる。
(……嫌な、予感がする)
身体の震えを抑えようと、胸の前でぎゅっと手を握る。
暫くすると中からお医者様が出てくる。
「ミツバ姉は……っ!」
縋るように問うと、お医者様は目を伏せて答えた。
「……手は、尽くしましたが……」
「……嘘……」
「……中へ、どうぞ」
お医者様はそれだけ言うと、去っていってしまう。
私は震える足を奮い立たせ、ミツバ姉の元へと向かった。
「……ミツバ姉……」
枕元に立って呼びかけるも、ミツバ姉は目を固く閉ざしたまま。
「……ミツバ姉」
ミツバ姉の右手を取りもう一度呼びかけると、ミツバ姉がまつ毛を微かに揺らす。
「っ……ミツバ姉……!?」
『ミツバ姉に無理をさせたくない』という心情と『ミツバ姉の声が聞きたい』という心情がぐちゃぐちゃになった私に、ミツバ姉は掠れた声で言った。
「……Aちゃん……」
「っ、ミツバ姉……」
「Aちゃん、あのね、聞いて欲しいことがあるの……」
……聞いて、欲しいこと……?
「お願い」という言葉に私が頷くと、ミツバ姉が「ありがとう」と微笑み、
「今から話すこと、よく聞いておいてね」
と前置きをして話し始めた。
「Aちゃん。
私、一度も、Aちゃんに迷惑かけられているなんて……思ったこと、ないのよ。
Aちゃんとの生活、とっても楽しかった。
女の子とお喋りができて、とても嬉しかった。
…私、幸せだった」
「……え」
思わず目を見開く。
「……Aちゃん」
ミツバ姉が弱々しくはあるけれども、しっかりと手を握り返してくれる。
「誰が何と言おうと……Aちゃんは、私の妹よ。
私とずっと一緒にいてくれた……とっても優しい、私の……大事で、大好きな、妹よ……」
微笑みながら紡がれた言葉に、目頭がじん、と熱くなったかと思うと、それ以上に熱い雫が頰を流れ落ちていく。
「っ、私も……!」
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あや(プロフ) - 赤羽@美羽さん» 受験お疲れ様でした! (2019年3月1日 0時) (レス) id: a0e0346a06 (このIDを非表示/違反報告)
赤羽@美羽(プロフ) - あやさん» ありがとうございます!受験が終わりましたので、どんどん更新していきたいと思います! (2019年2月28日 19時) (レス) id: 8b3b438a89 (このIDを非表示/違反報告)
あや(プロフ) - 赤羽@美羽さん» お忙しい中更新ありがとうございます!受験頑張ってください!これからも楽しく読ませていただきます。 (2019年2月11日 19時) (レス) id: a0e0346a06 (このIDを非表示/違反報告)
赤羽@美羽(プロフ) - あやさん» コメントありがとうございます!もうすぐで受験が終わるので、そうしたらもっとテンポよく更新できるようになると思います!これからも読んでいただけると嬉しいです! (2019年2月11日 16時) (レス) id: 8b3b438a89 (このIDを非表示/違反報告)
あや(プロフ) - 初めまして。沖田さんが好きで読ませていただいています。更新ありがとうございます。ミツバ篇好きな話なので、これから主人公ちゃんもどうなるか楽しみです! (2019年2月10日 12時) (レス) id: a0e0346a06 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:赤羽@美羽 | 作成日時:2018年11月18日 2時