二十九輪 ページ31
「こんないい女達をほっといて行っちまうなんざ、酷い連中だねェ」
「え」
「え？」
いきなり聞こえた坂田さんの声に、私達は一瞬、キョトンとする。
しかし、すぐにミツバ姉は可笑しそうに笑って言った。
「そうでしょ？だから私、目一杯幸せになって、あの人達を見返してあげるの。
こんな歳まで1人で、身体のことでも、そーちゃんやAちゃんに心配かけてしまったもの。
幸せになって、2人を安心させてあげたいの」
そう言いながら、ミツバ姉は私の頭を優しく撫でる。
……今ミツバ姉が吐露した心情も、初めて知った。
何だか、坂田さんは人の本心を曝け出させる魔法を持っているみたい。
どんどんミツバ姉の本音が出てくる。
「……でもね、銀さん」
ミツバ姉が私の頭を撫でながら言った。
「私達女の子にも、女の子同士で集まって、男の子抜きで色々楽しむこともあったのよ。
だから、そこは男の子達と一緒だと思うの」
「ね？Aちゃん？」と訊かれ、昔のことを思い出しながら私は頷く。
そういえば、お兄ちゃんと十にぃとそーくんのおにぎりに、七味唐辛子を散々入れて渡したことがあったなぁ。
皆には「ふりかけ」って言って渡したんだっけ。
……皆、凄く面白い反応をしてたなぁ。
「……幸せにならなきゃね」
昔のことを思い出していた私の横で、ミツバ姉がボソリと呟いたのが聞こえて、私は意識を現実に引き戻される。
「……きっと」
ミツバ姉が私を見る。
「きっと、幸せになれるよ」
そう。
きっとミツバ姉は幸せになる。
証拠はないけれど、確かにそう思えた。
入院してからは病状も落ち着いてるし、きっと近いうちに……。
私が考え込んでいると、ミツバ姉が咳き込む。
「ゲホッゲホッ」
「！」
「ミツバ姉……！？」
「おい、大丈夫か？！」
無理をしすぎたのかな……。
体調が良いからと、ミツバ姉に無理をさせすぎたのかもしれない。
「もう休んだほうが……。
身体に障るぞ」
「そうだよ、ミツバ姉。
お話なら、また明日にでもできるし……」
「っ……大丈夫、です……。
もう少し、誰かと、お話していたぃ……」
でも、みるからにミツバ姉の顔色は確実に悪い。
(さっきまで良かったのに……)
サッ、と血の気が引いた私の目に映ったのは。
「……っ、ミツバ姉……！？」
紅。
燃えるような、紅。
それがミツバ姉が吐いた血だと理解するのに、時間は要さなかった。
「おい！」
それを見て、坂田さんが焦って叫ぶ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 47人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
あや(プロフ) - 赤羽@美羽さん» 受験お疲れ様でした！ (2019年3月1日 0時) (
レス) id: a0e0346a06 (このIDを非表示/違反報告)
赤羽@美羽(プロフ) - あやさん» ありがとうございます！受験が終わりましたので、どんどん更新していきたいと思います！ (2019年2月28日 19時) (レス) id: 8b3b438a89 (このIDを非表示/違反報告)
あや(プロフ) - 赤羽@美羽さん» お忙しい中更新ありがとうございます！受験頑張ってください！これからも楽しく読ませていただきます。 (2019年2月11日 19時) (レス) id: a0e0346a06 (このIDを非表示/違反報告)
赤羽@美羽(プロフ) - あやさん» コメントありがとうございます！もうすぐで受験が終わるので、そうしたらもっとテンポよく更新できるようになると思います！これからも読んでいただけると嬉しいです！ (2019年2月11日 16時) (レス) id: 8b3b438a89 (このIDを非表示/違反報告)
あや(プロフ) - 初めまして。沖田さんが好きで読ませていただいています。更新ありがとうございます。ミツバ篇好きな話なので、これから主人公ちゃんもどうなるか楽しみです！ (2019年2月10日 12時) (レス) id: a0e0346a06 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：赤羽@美羽 | 作成日時：2018年11月18日 2時
