二十一輪 ページ23
珍しい。
率直な感想がそれだった。
そーくんがお兄ちゃんとミツバ姉以外にこんなに親しげに挨拶するなんて……。
武州にいた頃から、そーくんは警戒心が強かったから、ミツバ姉とお兄ちゃん以外にはあまり懐かなかったから。
「よかったら旦那も姉上に顔だしてあげて下せェ」
それだけ言うと、そーくんは背を向けて行ってしまう。
……と、少し行ったところで急にそーくんは立ち止まり、振り返って言った。
「テメェも」
「え?」
私?
思わず首をかしげると、そーくんは続けた。
「あんま無理すんじゃねェぞ。
姉上の看病をするのは良いが、テメェが倒れたら元も子もねェだろィ」
「ぁ……うん。ありがとう」
私のお礼を受け取り、今度こそそーくんは屯所へと帰って行った。
「……何、お宅ら。デキてんの?」
「できてる……?何がですか?」
ボソリと呟いた銀髪の人が言ったいることがわからず聞き返すと、その人は頭を掻きむしりながら、「やっぱ何でもねェ」と言って、ミツバ姉の部屋に入って行った。
話をしているのに邪魔をするのも悪いと思い、私はそのまま厨房に向かう。
そこにはまだ、食器の後片付けをしているお手伝いの方達が数人残っていた。
その人達は私の顔を見ると駆け寄ってきて、心配そうに尋ねた。
「ミツバさんは大丈夫だったの?」
「はい。少し安静にしていれば大丈夫だそうです」
安心させるように少し微笑んで言えば、皆さん心から安堵したような表情を見せた。
「えっと、お粥をもらいたくてきたんですけど……ありますか?」
「えぇ、えぇ。
必要かと思って、作っておいたのよ。
今温めるわね」
「ありがとうございます」
お粥が出来上がるまでの間、私は食器の片付けを手伝った。
しかし、ふと感じた息苦しさに、思わず喉に触れる。
あぁ、そういえば、夜の分の薬を飲んでいなかったな、と思い出す。
(ミツバ姉のところにお粥を持って行ったら飲もう)
私の様子に気づいたのか、一緒に作業をしていた人が声をかけてくれる。
「どうしたの?」
「いえ、何も……」
首を振りそう答えたとき、「お粥、出来たわよ」と声がかかった。
「あ……ありがとうございます」
「熱いかもだから、気を付けてね」
お鍋に入ったお鍋を受け取り、私はミツバ姉の部屋へと向かった。
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あや(プロフ) - 赤羽@美羽さん» 受験お疲れ様でした! (2019年3月1日 0時) (レス) id: a0e0346a06 (このIDを非表示/違反報告)
赤羽@美羽(プロフ) - あやさん» ありがとうございます!受験が終わりましたので、どんどん更新していきたいと思います! (2019年2月28日 19時) (レス) id: 8b3b438a89 (このIDを非表示/違反報告)
あや(プロフ) - 赤羽@美羽さん» お忙しい中更新ありがとうございます!受験頑張ってください!これからも楽しく読ませていただきます。 (2019年2月11日 19時) (レス) id: a0e0346a06 (このIDを非表示/違反報告)
赤羽@美羽(プロフ) - あやさん» コメントありがとうございます!もうすぐで受験が終わるので、そうしたらもっとテンポよく更新できるようになると思います!これからも読んでいただけると嬉しいです! (2019年2月11日 16時) (レス) id: 8b3b438a89 (このIDを非表示/違反報告)
あや(プロフ) - 初めまして。沖田さんが好きで読ませていただいています。更新ありがとうございます。ミツバ篇好きな話なので、これから主人公ちゃんもどうなるか楽しみです! (2019年2月10日 12時) (レス) id: a0e0346a06 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:赤羽@美羽 | 作成日時:2018年11月18日 2時