【銀魂】リコリスの花束を君に【沖田総悟】

十九輪 ページ21

「ミツバ姉……」

「ごめんね、心配かけちゃって……」

「そんなことないよ……！」


お医者様が帰ってから目を覚ましたミツバ姉は、開口一番謝罪の言葉を口にする。


謝って欲しいわけじゃない。
気を利かせて欲しいわけでもない。

ミツバ姉が一番辛いはずなのに。
自分のことを考えて欲しいのに。

それなのに、ミツバ姉が他人を気にかけてしまうのは、最早性分なのかもしれない。


そーくんを優しく見守りながら育ててきたから。
私の面倒を、ずっと嫌な顔一つせず見ていてくれたから。



「そーくんとの江戸は、楽しめた？」

「えぇ、とても楽しかったわ」


私の問いに笑顔で返してくれたミツバ姉に、私は安心する。

私があそこで2人きりにしたのは、きっと正解だったんだ。


「Aちゃんは……」

「あ、私はね……」


今日あった出来事を話そうと思った時。



「関係ねぇっつってんだろうが！
大体何でテメェここにいるんだ！！」

と隣の部屋から聞こえた声に、ドキリとする。


だって、その声の持ち主は……
(……十にぃ)


思わず私はミツバ姉の顔を見つめる。


「うるっせえ！大体何でテメェアフロなんだよ！」


再び聞こえた十にぃの声に、ミツバ姉の瞳が寂しげに揺れる。





(……私は)

私は、どうするべきなんだろう。


ミツバ姉は、蔵場さんと結婚する。
それはもう決まっていることで。
でもきっとミツバ姉は、十にぃのことがまだ好きで。
十にぃだって、離れていたからといってミツバ姉のことが嫌いになっているわけがない。

十にぃが私の頭を撫でてから見せた背中を思い出す。

いや寧ろ、きっと……。



2人を会わせてあげるべきなのか。
それとも、2人の意思を尊重して、私は何もしないべきなのか。
そもそも、こんなことを考えていること自体、大きなお世話なのか。


一体、私は……。





人が倒れたような音が聞こえて、私は我に帰る。

流石に心配になって、「ちょっと、隣の部屋を見てくるね」とミツバ姉に言って廊下に出ると、丁度十にぃが隊士の方の首根っこを掴んで歩いてくるところだった。


「っ、十にぃ……」


すれ違いざまに思わず呼びかけると、十にぃは立ち止まってくれる。


「何だよ」

「あ……あの」


思わず呼びかけてしまっただけで、特に何を言うかは決めていなかった私は、言葉を詰まらせてしまう。


「言いてェことがあるなら早く……」

その時、そう言った十にぃの言葉を遮る声があった。



「駄目だぜィ？A」

二十輪→←十八輪

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す