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『ただ今帰りました』



誰もいない空間に向かって声をかけます。
…いや、誰もいない、というのは語弊がありますね。

正しくは、犬が1匹います。柴犬です。

僕のペットで、名前は小太郎といいます。僕に懐いてくれていて、とても可愛らしいです。




本当は僕はいずれ死ぬつもりなので、何かペットを飼うのは避けたいところでしたが、小太郎は捨てられていたのです。つい拾ってしまいました。





それは、雨の降る日のことでした。僕はふらりと傘をさして町中を歩いていました。


すると、少し広い空き地のようなところがありました。青い猫型ロボットのアニメにでてくる土管のある空き地のようなあれです。

少し興味を引かれて立ち寄った時に鳴き声が聞こえたのです。
それが、小太郎です。



その頃はまだ小太郎は小さくて、雨に濡れて震えていました。

気づいたら、小太郎が入っていたダンボールごと持って家に帰っていました。





両親は、迷惑がるところかむしろ歓迎してくれました。普段自己主張が少ない僕です。
珍しく我儘を言うのが嬉しかったのでしょう。普段から我慢をしてみるものです。


その頃から、小太郎はずっと僕のそばにいました。





くうん、なんて鳴いて僕の足元に擦り寄ってきます。お腹が空いたのでしょうか。

玄関のすぐ横にある収納の中から餌を取り出し、器に盛って差し出します。ああ、水もやらなければ。



たまに、小太郎を見ていると、僕が死のうとしているのは本当にしたい事なのか分からなくなります。


しかし、そんな事で僕のアイデンティティを崩されては困ります。
僕から死にたがりを取ってしまえば、アイドルという肩書きしか残りません。




…ああ、顔がいいというのも残るのでしょうか。


もちろんナルシストなどではありません。
アイドルをしているので、まあいい方だと理解しているだけです。


いずれにせよ、あまり印象に残らないのは確かです。





僕は、人から忘れ去られることが怖いのです。
どうして、と言われても理由は答えられません。
なんで死にたいの、と言われるのと同じようなものです。

よく分からない、だけどその思いは胸にある。そんな感じでしょうか。
僕には難しくてよく理解はできません。




『……食べ終わりましたか? お粗末さまでした』


小太郎の皿を下げます。水の入った皿はそのままで。


……さて、僕も夕飯にするとしましょうか。

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無名(プロフ) - 何年も前の作品みたいなのでお返事は返って来ないんだろうし伝わることもないのかもしれないとは思いつつも最高の話すぎてコメントを残したい。思わず涙出るほど感動しました。いいテンポで進んで読みやすかったです。最高の作品をありがとうございます。 (2023年1月3日 8時) (レス) @page47 id: 04d38e0bdf (このIDを非表示/違反報告)
咲耶(プロフ) - この話凄く好きです。感動しました! (2018年10月16日 5時) (レス) id: e18275a362 (このIDを非表示/違反報告)
早姫(プロフ) - 感動しました〜...!こう...仲間の大切さとか、友情ってこんな感じなんですかね?もしも、男主君が転生したら今度は幸せになって欲しいです〜!感動し過ぎて、涙が止まらず親に驚かれました...( ̄▽ ̄;) (2018年5月24日 17時) (レス) id: 37587c2084 (このIDを非表示/違反報告)
果凛(プロフ) - かきぴーさん» 返信が遅くなり、申し訳ありません汗 そこまで言っていただけるなんて……!ありがとうございます。目を擦ったら腫れるので、ちゃんとハンカチで押さえてくださいね。笑 (2018年3月21日 8時) (レス) id: 38593f3572 (このIDを非表示/違反報告)
かきぴー - さっきから目を開いても前がよく見えないと思ったら瞼が腫れてるだけでした。めっちゃ号泣しました!!!隊長イケメン!!好き!!好きです!!!最後は家族の元に旅立ってしまった男主でしたが、仲間の大切さがよくわかる話でした!! (2017年12月15日 22時) (レス) id: 41dff5bdb3 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:果凛 | 作成日時:2017年8月30日 17時

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