幽冥の未来 ページ39
【千歳side】
1630年、江戸時代初期。
この時代、この場所に遡行軍の気配を感知した時は、ただひたすらに疑問を抱いた。
何故この場所に。
何が目的だ。
その疑問の答えは、時が経つにつれて少しずつ俺の中で形を成していった。
最悪な形を成しつつあるそれを、僅かな可能性に縋って否定して。
でも、現れた遡行軍に呆気なく答え合わせをされてしまった。
扇寺冬夜と扇寺真白が目的だ、と。
「...和泉守？おい、聞こえるか!?」
「...遡行軍に妨害されましたね」
「クソッ...！」
霊力を媒介にして和泉守達と行っていた念話が、奴らの目的を部隊に伝えた瞬間、遡行軍の術に妨害され途切れる。
ならせめてこんのすけの鈴から送られる映像を、とホログラムを立ち上がると、不幸中の幸いかそれはまだ繋がっていた。
けれど、直ぐにその幸いも不幸に変わる。
『...殺す』
「...っ、」
戦況を映す画面の向こうで、憤怒の獣と化したAの唸り声が微かなノイズと共に耳に届いた。
Aの両腕を覆う青い炎を形作るそれは、神力ではなく、霊力。
それを見た木蓮が、ぽつりと呟いた。
「...潮時、ですね」
「え...」
その言葉の意味が理解出来なくて、理解したくなくて、木蓮を見やる。
けれど彼女は途端に踵を返し部屋の外へと出て行った。
待ってくれ。
何処に向かう気だ。
「主？どうかし＿」
「...っ、待て!!」
「主!?」
突然部屋から出て来た木蓮を疑問に思ったのか、部屋の外で待機していた山姥切が顔を覗かせ俺に問いかけた。
しかし俺はそれに答えることをせず、すたすたと歩き去る木蓮を追いかける。
「待て...待て！」
ちっとも距離が縮まらない。
俺の足取りが覚束無いせいか。
「なになに？」
「どうしたのー？」
騒ぎを聞きつけた刀剣達が部屋から顔を出す。彼らの疑問に答える余裕もないまま、ただ木蓮との距離を縮めるために足を動かした。
そうしてやっとの思いで距離を詰めた俺は、木蓮の手を掴む。
それは呆気なく振り払われた。
「...」
冷たく俺を一瞥した木蓮は再び歩みを進めようとする。
「待て!!」
それを精一杯声を張り上げて引き止めた。
漸く振り返った彼女に、震える声で問いかける。
「...何を、する気だ」
「...潮時、と言ったでしょう」
何故か酷く悲しげに顔を歪めた彼女は、無情に、絶望の一言を突きつけた。
「手遅れになる前に、紫空切氷雪を刀解します」
.
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狩歌(プロフ) - 作者さん» 私も作者さんのコメントで大泣きしました。ありがとうございます...！！ (2020年2月14日 8時) (
レス) id: 8b0337ee0c (このIDを非表示/違反報告)
作者 - 大泣きした…もうやばい…語彙力低下した… (2020年2月14日 1時) (レス) id: 514b4bbba8 (このIDを非表示/違反報告)
狩歌(プロフ) - かふぇいんさん» 告白されちった(違う)。そんなこと言っていただけて感無量です。ありがとうございます！リクエスト了解しました！もうしばしお待ちください！ (2019年2月10日 22時) (レス) id: 8b0337ee0c (このIDを非表示/違反報告)
かふぇいん(プロフ) - 連続でコメントすみません…！夢主ちゃんの質問コーナーみたいな茶番が見たいです。ぜひお願いします！ (2019年2月10日 22時) (レス) id: 67bbfad4af (このIDを非表示/違反報告)
かふぇいん(プロフ) - すき。すきです。すきしかでてこないです。これからも心から応援してますッ…！ (2019年2月10日 22時) (レス) id: 67bbfad4af (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：狩歌 | 作成日時：2018年12月28日 13時
