『憧れだった人』 ページ24
.
虫が怖い。
動物が怖い。
初対面の人が怖い。
お化けが怖い。
生来の弱虫で泣き虫な私の性格を表すなら、「臆病者」の一言に尽きるだろう。
数分遅れで生まれた弟や家族の影に隠れて、色んなものに怯えて。
家族はそんな私を責めることはしなかった。多分、珍しい銀色の髪を受け継いだことによって色んな目に遭ったこととかを気遣ってなのだと思う。
「勇気」なんて言葉とは無縁で、いつもあと一歩が踏み出せない。
...それでも。
『真白』
憧れてしまった。
『大丈夫だった?』
眩しいほど明るくて、優しい、
『もう大丈夫だから泣くなー』
その強さに。
私にとって「強さ」は「力」だった。
私が見てきた「強さ」は「暴力」だった。
だから、「強さ」なんていらなかった。
誰かを傷つける強さなんていらない。
そんなものを持つくらいなら弱いままでいい。
そう、思っていた。
それなのに。
傷つけられる私と弟の前に立ちはだかり、守ろうと力を振るうその姿は美しくて、
私達の傷を見ながら大丈夫かと問うて、名前を呼んでくれる声は優しくて、
頭を撫でてくれた手は、抱きしめてくれた体は温かくて、
その笑顔は、日の出を浴びる雪のように眩しかった。
ああ、こんな風になりたいなって、
弟や大切な人を守れるような強さが欲しいって、
初めてそう思った。
でも、私はそう思うのが少し遅かったのかもしれない。
...いや、「優しい強さ」に憧れた私は当時六歳だ。何も出来なくて当然だと言われればそうだったのだろう。
それでも、後悔せずにはいられない。
あの時、もっと大きな声を出せていたら。
あの時、もっと早く動けていたら。
あの時、もっと力があれば。
あの時、
もっと強さがあれば。
あの人は最期まで強かった。
私は最後まで弱かった。
守られてばかりで、何も守れなかった。
.
気づけば十七。姉の歳まで、あと一年。
一年後までに、私はあんな風に強くなれるのだろうか。
死ぬその瞬間まで笑っていられるような、
優しさと強さを持った、
憧れだった、あの人のように。
.
248人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「刀剣乱舞」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
狩歌(プロフ) - 作者さん» 私も作者さんのコメントで大泣きしました。ありがとうございます...!! (2020年2月14日 8時) (レス) id: 8b0337ee0c (このIDを非表示/違反報告)
作者 - 大泣きした…もうやばい…語彙力低下した… (2020年2月14日 1時) (レス) id: 514b4bbba8 (このIDを非表示/違反報告)
狩歌(プロフ) - かふぇいんさん» 告白されちった(違う)。そんなこと言っていただけて感無量です。ありがとうございます!リクエスト了解しました!もうしばしお待ちください! (2019年2月10日 22時) (レス) id: 8b0337ee0c (このIDを非表示/違反報告)
かふぇいん(プロフ) - 連続でコメントすみません…!夢主ちゃんの質問コーナーみたいな茶番が見たいです。ぜひお願いします! (2019年2月10日 22時) (レス) id: 67bbfad4af (このIDを非表示/違反報告)
かふぇいん(プロフ) - すき。すきです。すきしかでてこないです。これからも心から応援してますッ…! (2019年2月10日 22時) (レス) id: 67bbfad4af (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:狩歌 | 作成日時:2018年12月28日 13時