57*必要書類。 ページ17
「おかえりなさいませ、どうでしたか?」
不動産屋さんに戻って机に座ると、知念さんが、ニコって笑いながら、私と智さんの前にお茶を出してくれる。
多分歩いて喉が乾くから、っていう気遣いで、冷たいお茶にしてくれたんだろう。
一口飲むと、体にスーッと染み渡っていく気がした。
「ちょうどよかったよ、並木も綺麗だしねぇ」
隣で智さんがお茶を一口飲んで、目を細めた。
「それはよかったです。駅から少し離れているので、大丈夫かな?と思っていたんです」
知念さんが、ホッとしたように微笑む。
確かに私は、始発の電車を逃したらかなりヤバイから、とにかく駅に近い物件を探した。
智さんのお家は、私だったら朝の遅刻が怖くて住めないかもしれない。
「あー、おれ在宅勤務だからだいじょぶ」
「あっ、そうでしたね!」
「でもAちゃんは朝早いもんねぇ」
智さんが急に私の方を見て、「ね?」って首をかしげるから、
「あの距離は、駅までダッシュできないかもしれないです…」
「あはっ、Aちゃん駅まで走ってるの?」
「た、たまに、ですよ?」
電車乗り遅れそうでダッシュしてる、だなんて余計なことを口走ってしまった。
「えっと…では契約に際しての必要書類なんですけど…」
ピシッと襟を正した知念くんが、真剣な表情で書類を説明する。
その横顔は、本当に一生懸命で、眩しくて、
私こんな風に見えてるのかなぁ…って、やっぱり少し落ち込んでしまう。
「身分証明書、所得申請の書類、連帯保証人の契約書…」
「こんなにいるんだぁ」
ずらっと並んだ必要書類リストを見て、智さんが目を丸くする。
「アメリカではいらなかったんですか?」
「うん、おれシェアハウスか寮だったしぃ、なんか適当だったんだよねぇ」
なんか「住む?」「いいよ!」みたいなノリでハイタッチをする陽気なアメリカ人が、勝手に脳裏に浮かんだ。
確かに印鑑だの保証書だの、日本って本当に書類を書くことが多い国だよなぁ、って、空港で働いていて私もよく感じる。
「たくさんあって、大変ですよね」
知念さんが、少し困ったように眉尻を下げた。
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璃夢(プロフ) - みっきさん» みっきさん、コメントありがとうございます。智さんのほんわかと優しさ、感じていただけて嬉しいです。私も書きながら癒しのパワーをもらってます笑 これからもどうぞよろしくお願いいたします♪ (2020年6月10日 0時) (レス) id: 7d2e6a298f (このIDを非表示/違反報告)
みっき(プロフ) - 初めまして(^^)いつも楽しみに読ませていただいてます♪智くんのほんわかと優しい癒しオーラを感じて毎回読み終わったらほっこりしてます。次回更新も楽しみに待ってますね♪ (2020年6月4日 0時) (レス) id: 0364fca5be (このIDを非表示/違反報告)
璃夢(プロフ) - かえるさん» かえるさん、コメントありがとうございます。お話楽しんで頂けて、とても嬉しいです♪青い鳥の開設、今準備中なので、用意が出来たらすぐにお知らせしますね^ ^ これからもよろしくお願いします! (2020年5月31日 0時) (レス) id: f209da7995 (このIDを非表示/違反報告)
かえる(プロフ) - いつも更新楽しみにしています!!差し支えなければ、智さんの新しいお家の見取り図が見てみたいです(^^) (2020年5月23日 1時) (レス) id: a9f7041f7f (このIDを非表示/違反報告)
璃夢(プロフ) - ゆうにゃんさん» ゆうにゃんさん、コメントありがとうございます♪ ドキドキしていただけて、とっても嬉しいです。これからもどうぞ宜しくお願いします! (2020年5月20日 9時) (レス) id: f209da7995 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:璃夢 | 作成日時:2020年5月17日 22時