キッカケ ページ19
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高校入学して二月ほど経った頃のことだった。宮Aが学校にも慣れ、男子バレー部のマネージャー業もきっちりこなし始めてきた頃。
ある日、部活終わりにAが体育館の用具の整理をしていた時だった
「ちょっと、何で開かへんの!?かっっった!!なんやねんこれ!!」
Aは不慮の事故(他の一年が中を確認せずに施錠)に巻き込まれ、体育館倉庫に閉じ込められてしまった。その時は初夏だったため、倉庫内はかなり蒸し暑く、閉塞感もあってかAは次第に息苦しさを感じるようになった。
小さな窓から漏れるのは月光。外の音を聞いても、先程までの部活動生が騒がしくしている声は聞こえない。
兄たちも自分の存在を忘れて帰ってしまったかもしれない。そう思うと、途端に涙が出てきた
「携帯も部室やし、扉は当然開かへんし…踏んだり蹴ったりや」
連絡手段はなし、大声を上げても無駄に防音設備が整っているせいで外へ声がもれるようなことはない。
Aは空腹のあまりに鳴るお腹をおさえながら、必死に助けを待った。誰かが気付いてくれるだろう。侑か治のどちらかが途中で気付いて戻ってきてくれるだろうと願った。
そして、Aが閉じ込められて一時間後
「____ここにおったか……!!」
ガチャ、と鍵の開く音がして重苦しい鉄の扉を開いたのはバレー部主将の北信介。彼は肩で息をしながら倉庫の中に入ってくると、隅の方で蹲っていたAの安否をすぐに確認した。
呆然とするAの前に膝をついて、外傷が無いかをくまなく探す。
「怪我ないか、気分とかも悪ないか?」
「……った」
「ん?」
「怖"かった……!!誰も来"てくれへんかと思った…!!」
Aは安心のあまりボロボロと涙を流して、北に抱きついた。たった一時間、倉庫に閉じ込められた。それだけのことかもしれないが、彼女にとってはそれが何よりも恐ろしい経験であり不安な出来事だったのだ。
嗚咽を漏らすAの頭を、北は黙って優しく撫でる。自分よりも少し大きな女子を撫でるというのは変な感じがしたが、北は何も言わずただ彼女を安心させようと頭を撫でた。
「A、大丈夫か」
「グスッ……なんで北さん、私の名前知ってんですか?というか、なんで私がここにおるって……」
「当たり前やろ、大事な部員。一人欠けたらすぐわかるわ」
怖い思いさせて悪かったな、そう言って頭を撫でてくれた北にAは迷うことなく恋に落ちたのだ。
きっかけは些細なことかもしれない。しかし、Aにとってはこの出来事が運命であり恋愛の始まりであったのだ。
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かなで(プロフ) - この間初めて読んだのですが、面白すぎて一気読みしてしまいました！評価ボタンが一つなのがとても惜しいです笑 これからも頑張ってください！ (2020年3月8日 15時) (
レス) id: e96d9c0e1e (このIDを非表示/違反報告)
ぴいち(プロフ) - 月埜さん» 月埜さん、コメントありがとうございます。連載当初から見ていただいて、こちらも感謝の気持ちでいっぱいです。最後までお付き合い頂きありがとうございました! (2020年2月26日 22時) (レス) id: f952b08383 (このIDを非表示/違反報告)
月埜(プロフ) - 完結おめでとうございます。公開初日から読ませて頂きました。月並みな言葉しか言えませんが、主ちゃんと北くんの関係が最初から最後まで本当に素敵だなと思いました。素敵なお話をありがとうございました！ (2020年2月26日 18時) (レス) id: d1ca7a883a (このIDを非表示/違反報告)
ぴいち(プロフ) - 柿山さん» 柿山さん今回もお目に止めて頂きありがとうございます!!真っ直ぐな主人公とそれを蔑ろにしてくれない北さんのモダモダした関係が続きますが、気長に読んでいただけたら嬉しいです! (2020年2月14日 10時) (レス) id: f952b08383 (このIDを非表示/違反報告)
柿山(プロフ) - あああ〜〜もう今回も今回とて好きです!!!夢主さんの北さんに対する真っ直ぐすぎる感情表現が堪りません…!!しかもそれを雑に扱うのではなく、丁寧且つスパッと対応する北さんの在り方も素晴らしいです!!!これからゆっくりと楽しみにしております…!!! (2020年2月13日 22時) (レス) id: 296b088bbe (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ぴいち | 作成日時：2020年2月13日 21時
