誰が為の幸せ ページ11
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「休憩〜」
「ウィーッス」
Aは笛を吹くと同時に、ベンチ近くに置いていたドリンクとタオルを手際良く部員たちに配る。治はそんな妹の姿を眺めながら隣でドリンクを飲む角名に話しかけた。
「なぁ、Aの奴。多分落ち込んでてん」
「えぇ?そうかな、別にフツーじゃない?」
「いや……なんか、心做しか目が合う回数がいつもより少ない気ぃすんねん」
「は…?」
治はしょんぼりした顔で北に話しかけるAを見つめる。もしかすると今日の昼、北を諦めろと言ったことを気に病んでいるかもしれない。もしそうだとしたら、治は既に死んでしまいたいような気持ちになっていた。侑はオープンなシスコンなのだが、内に秘めたる思いは治の方が強い。
妹を傷つけたとあっては治の中では切腹ものの出来事だった。
「アカン、おれもう死ぬしかない」
「えっ、ちょ急になに」
「北さんに介錯してもらわなアカンねんきたさ」
「ちょちょ、侑!!」
今にも死んでしまいそうな治を角名が押さえつけ、侑を召喚する。侑は何やら面倒臭そうな顔をしてあー、はいはい。とこちらへやってくる。どうやらこれはイレギュラーなことではないらしい。
「サム、たまにこーなんねん」
「何これ初めて見たんだけど鬱モードか何か?」
「Aと喧嘩した後とか、なんかアカンこと言うてもうた後になんねん」
何してんの、と侑が治に事情を聞けば二人は何となく状況を理解する。そして、少し離れたところで喋る北とAを見て首を傾げた。いや、いつもと変わらんやん。Aは照れながら北に話しかけているし、北は相変わらず彼女を邪険に扱うことなく接している。
「なぁ、多分Aの奴…北さん諦める気ぃ更々ないで」
「今だってあんなにあからさまに狙ってんのに」
「治考えすぎやて」
なぁ、と顔を見合わせる二人。治はそんな二人の奥に見える妹を見てほっと胸を撫で下ろした。もう、諦めなくていい。Aが幸せに過ごせる道がそれしかないのなら、治はそれを阻むことだけはしたくなかった。
例え、その気持ちが受け入れられずともAが満足しているのならそれでいいのだと。
「北さん、それであの……うぁ〜!!結婚して下さい!!」
「A、すまん」
「うぅ〜〜本日五回目のすまんありがとうございます」
「何で礼言うん…?」
傍から見れば無謀且つ可哀想な失恋かもしれないが、北に思いを告げている時のAの顔が一番生き生きしていて可愛らしいのだと、バレー部の面々は誰もが知っている事だった。
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かなで(プロフ) - この間初めて読んだのですが、面白すぎて一気読みしてしまいました！評価ボタンが一つなのがとても惜しいです笑 これからも頑張ってください！ (2020年3月8日 15時) (
レス) id: e96d9c0e1e (このIDを非表示/違反報告)
ぴいち(プロフ) - 月埜さん» 月埜さん、コメントありがとうございます。連載当初から見ていただいて、こちらも感謝の気持ちでいっぱいです。最後までお付き合い頂きありがとうございました! (2020年2月26日 22時) (レス) id: f952b08383 (このIDを非表示/違反報告)
月埜(プロフ) - 完結おめでとうございます。公開初日から読ませて頂きました。月並みな言葉しか言えませんが、主ちゃんと北くんの関係が最初から最後まで本当に素敵だなと思いました。素敵なお話をありがとうございました！ (2020年2月26日 18時) (レス) id: d1ca7a883a (このIDを非表示/違反報告)
ぴいち(プロフ) - 柿山さん» 柿山さん今回もお目に止めて頂きありがとうございます!!真っ直ぐな主人公とそれを蔑ろにしてくれない北さんのモダモダした関係が続きますが、気長に読んでいただけたら嬉しいです! (2020年2月14日 10時) (レス) id: f952b08383 (このIDを非表示/違反報告)
柿山(プロフ) - あああ〜〜もう今回も今回とて好きです!!!夢主さんの北さんに対する真っ直ぐすぎる感情表現が堪りません…!!しかもそれを雑に扱うのではなく、丁寧且つスパッと対応する北さんの在り方も素晴らしいです!!!これからゆっくりと楽しみにしております…!!! (2020年2月13日 22時) (レス) id: 296b088bbe (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ぴいち | 作成日時：2020年2月13日 21時
