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第三章 ページ4

ベッドに戻ってきた俺は、オーナーから話を聞いた。

オーナーが言うには、俺には「葵」という名をした恋人がいたらしい。

でもそんな名前をした奴俺の記憶にないのになぁ、と思っていると、「大丈夫、忘れただけだ」とオーナーは返した。


『……それで、俺の想い人が今死にに行こうとしてるから、それを助けに行こうとしてくれたんですか』

「ああ、そういうことだ」

『そうなんですか、……ありがとうございます』

「ん」


彼がうなずくのを見て、俺は視線を毛布へと移した。

俺が忘れた俺の想い人。

俺を庇って消えた人。

どんな人だったんだろう。

そう考えていた時、目に入った左手薬指。

綺麗な、赤色。





――「そんなに直ぐに死なれたら困る。

俺のためにも生きてくれ」





『!?』

「どうした!?」

びくん、と一度痙攣した俺に、オーナーが反応する。

俺が浅い息を吐き出すのを見ると、慌てて背中を摩ってくれた。


「どうした、ゆっくりでいいから何があったか教えてくれ」

『はっ、はーっ、はっ、こ、この糸……』

「この赤い糸か」

『誰か、……知らない人の声……、思い出して』


頭の中に流れ込んだ声は、オーナーの声ではなかった。

でも安心する、優しい低い声。


『俺のために生きてくれ、って、オーナー言った?』

「言ってない」


じゃあ、やっぱり俺には好きな人がいたんだ。

俺の大事だった人。


『……何で、じゃあ何で覚えてないんだろう……っ』


左手を抱き締めて嗚咽交じりに泣く俺の背中を、オーナーはずっと撫でてくれた。

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おむらいす星人(空弥)(プロフ) - ナッキーさん» 読んでくださる方が一人でもいらっしゃるのなら、書こうかな、とも思えるようになりました。感謝してます。非常に短い間ではありましたが、ナッキーさんのお陰で更新停止を解こうかと思ってますw長文すみません。また良ければこの作品を覗いてくださると幸いです (2019年5月13日 21時) (レス) id: 7c5acb30f8 (このIDを非表示/違反報告)
おむらいす星人(空弥)(プロフ) - ナッキーさん» 返信遅くなりましたが返させて頂きます。正直この作品は私自身も大好きだったのでそう言っていただけただけでも嬉しく思います。上の文章を書いているとき、本当に不安でしかたがなくて、この作品の需要はないものだと思うくらいにしんどかったので……→ (2019年5月13日 21時) (レス) id: 7c5acb30f8 (このIDを非表示/違反報告)
おむらいす星人(空弥)(プロフ) - 碧依さん» 遅くなりましたがコメントありがとうございます!……戻ってきたい気持ちと書かない方がいい気持ちとが半分半分といった状態ですが、そう言っていただけて気持ちが楽になりました。本当にありがとうございます (2019年5月13日 21時) (レス) id: 7c5acb30f8 (このIDを非表示/違反報告)
ナッキー(プロフ) - 初めまして、私はこの作品を頭から読んでいてとても好きでした。最近だと、男主作品を読むことがかなり多くなりました。ですが、作者の執筆意欲を下げる行為に悲しくなりました。もっとこの作品を読んでいたかった私にとっては残念です。空弥さん、更新待ってますからね (2019年5月7日 5時) (レス) id: 105b0be3f0 (このIDを非表示/違反報告)
碧依(プロフ) - そうですか、残念です。平等に評価されるまで此処には戻って来なくていいと思います!空弥さんの作品大好きなので待ってますね。 (2019年4月20日 19時) (携帯から) (レス) id: fa08d6addd (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:空弥 | 作者ホームページ:http:/  
作成日時:2019年2月11日 5時

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