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第四話 ページ4

次の日、俺の事務所。

クライアントは、粘着質な男だった。


「日下部先生、俺はどうしても嫁と別れたくないんだ。

どうしたらいい!?

離婚しないためなら何でもするぞ!?」

『……はぁ』


ばん、と机まで叩いて勢い良く立ち上がった依頼人――田中さんに俺は苦笑する。

今までこんな感じのヒステリーな女依頼人は見たことがあったが、これが男となるとなぁ……、と。

いや、正直女のヒステリーも苦手だがそれはさておき。


『落ち着きましょう田中さん。

こういう時叫んでも無駄ですから』

「でもなぁ」

『大丈夫です、負けませんから』


そう、俺は負けるわけにはいかないのだ。

この勝負に負けたら、相手に一歩結婚への道を進ませることになってしまう。

そんなのは御免だ。


『離婚したいと言われた理由は?』

「俺の……金の使い方だろうなぁ。

ギャンブルと煙草と酒と……」

『では、それを減らしてみてはどうです?』


にこり、と営業スマイルでこう尋ねると、男は「うーん」と唸る。


「でもなぁ……、どれも止められそうにないんだよなぁ」

『原因はそれだと分かっているんでしょう?』

「うーん……。

……先生、それ以外で何とかならないか?」


何でもするぞ、って言った奴誰だよ。


『そ、そうですねぇ……。

じゃあ、毎日「好きだよ」とでも言ってあげたらどうでしょう?

ギャンブルやお酒、煙草にかまけているのでしたら、声かけも減ってきているのでは?

それくらいなら田中さんもできるんじゃないでしょうか』

「おお!」


感動したような声を出す田中さん。

うんうん、と数回頷いた後、「それなら」と言った。


「毎日言ってあげれば違うかもしれないな!

とにかく、裁判は頼んだぜ先生!」

『勿論です』


この人のためじゃない、俺のためだ。

田中さんには悪いけど、俺はそう思いながら大きく頷いた。

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塩架 - コメント失礼します!BLに目覚めそうです。一つ一つの言葉が凄く、なんて言うか分かんないけど凄いんです!←語彙力無。 面白いです!無理しない程度に更新頑張って下さい!!! (2019年2月25日 22時) (レス) id: dfbaedbf2e (このIDを非表示/違反報告)
Ratte*らて(プロフ) - に"ゃー、最高じゃあ…今回も最高に面白いっ!更新頑張ってね!応援しとる(´ω` )! (2019年2月24日 19時) (レス) id: 1d7a6576dd (このIDを非表示/違反報告)
野良神@ドリルというBOSSを倒すまで低浮上(プロフ) - 面白かった!更新頑張ってp(^_^)q (2019年2月24日 15時) (レス) id: 3aee3d3601 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:空弥 | 作者ホームページ:http:/  
作成日時:2019年2月23日 19時

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