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「…駿、好き」
唐突な告白に、表情では平静を保っていながらも、心の中までは驚きを隠せなかった。
あれから、雰囲気が変わったと言われることが多くなった。圭一への焦りと嫉妬が消えたからだろうと思う。
そして、同時に告白される回数も増えた。
だけれど、今駿と向かい合っている相手は、高校からの女友達で、一番仲がいい女子だった。
「………考えとく」
生憎、好きな人なんて居ないので、今までされた告白は全て断ってきた。
一度彼女を作ってみようかと了承しようとした。
でもその瞬間、何故か全く関係のない、圭一の顔が頭の中に浮かんできて、断った。
今では、なんで断ったんだと後悔しかない。
「はー、どーしよ」
「何かあったん?」
「こいつ仲いい女友達から告られたんだとよ」
「うわ、断りづれ」
部活中、いつもの筋トレメニューをこなしながら、同級生に相談しても、なかなか解決しなかった。
友情関係を壊したくないし、別に付き合えないとかではないし。
「薫だろ?いいじゃん。美人だし、付き合えば?」
「まーなー…」
結局まだ気持ちが固まらないまま、部活は終わってしまった。
思えば、あれから一年が経とうとしていた。
今年の冬も相変わらず寒くて、マフラーをぐるぐるに巻きつけ、その中に顔を埋める。
「先輩」
「うお、圭ちゃん」
すると、圭一が後ろから呼び止めてきた。
駿が振り返ると、圭一は物言いたげな目をして、じっと駿を見つめた。
「……なに?」
「…女友達と付き合うんですか」
駿と同級生の会話を聞いていたらしく、どこか焦ったような顔をして、駿を見つめる。
駿はというと、自分がモテるから、からかおうとしているのかと、強がって食い気味に言う。
「うん、そうだよ」
「嫌です」
すぐに被された言葉に、駿は「は?」と返してしまう。
なんでお前にそんなこと言われないといけないんだと圭一を見ると、いつもとは違う表情をしている。
焦っていると言わんばかりの表情で、駿は少しだけ面食らう。
「先輩、その人と付き合わないで下さい」
「は?なんで」
「…まさかまだ気付いてないんですか」
「何にだよ」
駿の言葉を聞くと、圭一は呆れたような顔で、深くため息をついた。
なんだこいつと駿が言い返そうとすると、圭一が言った。
「去年の俺、かなり分かりやすかったと思うんですけど」
そして、ポケットに突っ込まれている駿の手を取り、自分の口元へと引き寄せた。
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作者名:男主クリスマス合作企画 x他2人 | 作者ホームページ:http:/
作成日時:2018年11月11日 17時