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「クリスマス?」

メイドに聞き返すと、華やかな笑顔で頷いた。

「はい!西洋の文化で、12月24日の夜を聖なる夜と言って…あ、そうだ!」


駅前のクリスマスツリーの前で好きな人に告白すると、その恋人たちは永遠に結ばれる、のだという。
クリスマスという行事は人気のある女性雑誌に取り上げられ、もう普通の人なら男女問わず知っているらしい。

メイドはその夜、好きな男と夜景を見て過ごすのだと、幸せそうな顔で教えてくれた。

羨ましいと、思った。

人に相談できる恋心なら、こんなに拗らせてはいない。
身分の差であったり、性別の関係が、総一朗に燻っている感情に、無理やり蓋をしていた。

好きな人に気持ちを伝えられないというのが、こんなにもじれったく、つらいというのを、初めて知ったし、この菓子のように甘い感情も、ふとした瞬間に心が跳ねるのも、須田に会って、初めて知った。


「葛西、掃除がまだ済んでいないだろう」
「須田様!ごめんなさい、すぐ戻ります!」


メイドが慌てながら箒を持ち直し、部屋の外へと出ていった。


「須田」
「総一朗様も、まだお勉強の途中でしょう」


須田は、総一朗と目を合わさず、声を掛けるだけして、すぐに扉へと向かう。


「須田」


その総一朗より肉が薄くて骨ばった手を、掴んだ。

だけれど、次の言葉がいつになっても出て来ない。
くるりと振り返った須田の端正な顔を目の前にして、言葉に詰まる。息が苦しい。

自分が須田に心底惚れているのだと、改めて感じた。


「何でしょうか、総一朗様」


何処か気品ある瞳が、総一朗を捉えた。
これは、牽制だ。

総一朗だって、もう子供じゃない。
自分の感情くらい自分で言わなければと思うのに、須田が目の前にいると、どうにも口ごもる。


「お前は、もうとっくに僕の気持ちに気づいているんだろう?」
「何の事です?」


言ってしまったら、もう以前の関係には戻れなくなると分かっていた。
これまでに築いてきた信頼も、全てが無くなってしまうと、分かっていた。

何より、須田は総一朗の事なんか、全く恋愛対象じゃないんだろう。
全て分かった上で総一朗を避けるのも、なのに絶えることないこの感情も、ああ、全て苛つく。

「総一朗さ、まっ…」

心配そうに伸びてきた、須田の白い手首を掴み、引き寄せる。
総一朗に一度全体重を預けた須田は、慌てたように離れようとする。
そんな須田の身体を、きつく。
力の限りに、きつく、きつく。
抱きしめた。



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作者名:男主クリスマス合作企画 x他2人 | 作者ホームページ:http:/  
作成日時:2018年11月11日 17時

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